望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

テロリズムの定義

ある暴力行為が、犯罪行為なのか、政治的または宗教的な目的を達成するための行為なのか、圧政などに対する抵抗運動なのか、紛らわしいことがある。非正規軍による軍事行動の一環だと主張されることもある。判断するためには、その暴力行為を行った意図を分…

情報発信と情報収集

日本の外交は対米追従だと揶揄されたりする。確かに国際舞台で日本が独自の外交を繰り広げ、主役級の外交プレーヤーになった場面を見た記憶はほとんどない。国際問題にはいつも受け身で、何かが起きてから個別に対応するだけという印象。一方で、「歴史問題…

集団免疫

伝染性のウイルスに対する免疫を獲得した人が増えて、そのウイルスに感染しにくい人が増えると感染の広がりが穏やかになり、免疫を獲得した人が十分な数に増えると社会での感染の広がりが抑制されるというのが集団免疫。これは①ウイルスに感染した人は免疫を…

操作できる平均気温

東京での気象観測地点が2014年12月2日に、大手町の気象庁庁舎から北の丸公園に移された。この移転に伴い気温などの平年値も変更され、年間の最低気温は従来より1.4度低くなり、年間の平均気温は16.3度から15.4度に下がる。夏より秋や冬の方が差が大きく、夏…

絡めとられる

地中海というと、スペインやイタリア、フランス南部などに多くのリゾート地があり「欧州の海」というイメージが強いが、それは地中海に関して欧州発の情報量が多いためだろう。地中海の東側にはアラブ世界があり、地中海の南側にはアフリカがあり、西側では…

突出した先見性

坂口安吾の歴史小説『信長』の中に次の言葉がある。 「人が最後の崖に立ったとき、他に助けを求め、奇蹟を求める時は、必ず滅びる時である。自分の全てをつくすことだけが奇蹟をも生みうるのだ。もしもそれを奇蹟とよびうるならば」 「ギリギリの時には奇策…

新しい党名

日本では政党名に「民主」がつく政党は過去にも現在も数多く存在する。民主という言葉には肯定的な政治イメージがあるから、好んで採用されてきたのだろう。野党は好んで民主を政党名につける傾向があり、民主がつく政党数を増大させてきた。だが、民主を冠…

ヤジについての考察

ヤジるとは「他人の動作や発言などに、からかいや批判の言葉を浴びせる」ことと辞書にある。似たような言葉にチャチャ(茶々)があるが、こちらは「じゃま。妨害。他人の話の途中で、横から入れるひやかし気味の冗談」のこと。ヤジは「とばす」ものだが、チ…

保守的な態度

保守というと、新しい動きに背を向け、伝統など旧来のものに親しみ、固持しようとするイメージだ。新しい動きに敏感で、新しいことを受け入れ、すぐに順応する若者に比べ、概して年配者のほうが保守傾向が強いと見なされる。保守=悪いこと……ではないのだが…

治山治水

中国の南部、長江(揚子江)流域など広域で6月から記録的な豪雨が続き、本土31省のうち27省に洪水などの被害が及んだという。被災者は3800万人、1500万人以上が避難を強いられ、約3万棟の家屋が倒壊などの被害を受け、約350万haの農地に影響が及んでいると…

欧米による評価

2015年に来日した独メルケル首相の発言で、「歴史認識」に関する部分を日本の新聞などは大きく伝えた。共同記者会見で独メルケル首相は、戦後70年に関して「過去の総括が和解の前提となる」と述べたものの、日中・日韓関係への具体的な言及は避けた。だが、…

記憶と記録

例えば、戊辰戦争は1868年1月に始まり、翌69年5月の箱館戦争で終結したが、その体験者はもう存命していないだろう。戊辰戦争の体験者の記憶は、今も受け継がれているのだろうか。戦闘に参加した人、戦闘に巻き込まれた人、政治・経済的混乱で困窮した人な…

高すぎる理想

自分の抱いた理想の実現に向って、現実の世界が動いていく……とは限らない。むしろ、自分の抱いた理想がいつまでも実現せず、やがて、現実の世界はこんなものかと落胆し、時には現実に怒りをぶつけ、時には現実に愛想をつかしたりしながら、現実の世界と折り…

妙な現実味

米国で今年11月3日に大統領選挙の投開票が予定されている。例年なら、民主・共和の両党が選挙集会を各州で相次いで開催し、支持基盤を固めるとともに、支持拡大を求めて大統領候補者たちが激しい舌戦を繰り広げる。だが、今年は新型コロナウイルスの感染拡…

理想にしがみつく

日本国憲法の第9条は素晴しい理想を掲げている。「戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認」を規定している第9条は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手…

需要に見合ったインフラ整備

経済成長とともに中国ではインフラ整備が進んだ。道路が整備され、都市化が進み、高速鉄道や高速道路が全国に張り巡らされ、空港も各地に整備され、原子力発電所などの建設も急ピッチで進んでいる。アジアでも経済成長が続き、インフラ整備の需要が急増して…

祭りがない夏

今年は、青森ねぶたや仙台七夕まつり、秋田竿燈まつり、盛岡さんさ踊り、山形花笠まつり、祇園祭の山鉾巡行、岸和田だんじり祭、阿波おどり、よさこい祭り、博多どんたく港まつり、博多祇園山笠、隅田川花火大会、長岡市の花火大会など全国的に知られ、多く…

加害者の側にもいた

福島第一原発の事故以来、反原発を声高に主張する人が増えた。1、3、4号機原子炉建屋で水素爆発が起きて放射性物質がまき散らされ、数年経っても広い範囲で人々の居住が制限されており、1〜3号機はメルトダウンに至って人が近づけず、原子炉解体のメド…

出汁と旨味

日本では肉を生で食べる習慣はなかったそうだが、今では珍しくなくなった。魚を生で食べる習慣があるので、その影響なのかもしれないし、レアでステーキを食べる欧米の影響かもしれない。さらにはレバーなどの内臓も生で食べるようになって食中毒が発生、と…

殺される黒人

2015年にも米国で、警察と関わった黒人男性が死亡した。ボルティモアの検事によると、黒人男性フレディ・グレイ氏は4月12日、警官と目が合い、飛び出しナイフを所持していたとして拘束され(ナイフは合法の種類だった)、警察車両で移送中に頸椎を損傷、グ…

マスクで広告

各国の新型コロナウイルスの感染状況を伝えるニュース映像を見ると、マスクをつける習慣がなかったという欧米などでも、公共交通や店舗内などでマスク着用が義務化されたこともあってか、出歩く人々のほとんどがマスクをしている。カラフルなマスクが多いが…

迷走する憲法観

5月3日の憲法記念日に合わせて毎年、新聞などは憲法についての記事を掲載し、各地で憲法を巡る集会が開かれ、その様子はTVなどでも大きく扱われる。だが1、2日後には憲法に関する記事はほとんど姿を消し、TVではUターンラッシュが大きく扱われるように…

動いている地表

2015年4月25日にネパールでM7.8の地震があり、周辺のインドや中国、バングラデシュを含めて死者は8500人を超え、全半壊の建物は57万棟、政府施設の全壊も1万以上と甚大な被害になった。震源に近い首都カトマンズでは世界遺産の歴史的建造物が崩壊し、観光…

中国ではない中国

アヘン戦争で英国軍は香港島を占領し、英国は香港島を英国領だと宣言、1842年の南京条約で清は英国に香港島を割譲することを承認した。英国はさらに香港島の対岸の九龍半島を永久租借し、新界地域を99年租借する条約を結んだ。香港は英国をはじめ西欧列強の…

レジスタンスなき平和主義

戦国時代の山間の農村を舞台とした黒澤明監督の名作「七人の侍」。刈り入れが終わった後に農村はいつも野武士の集団に襲われるので農民は、浪人を雇って村を守ってもらおうとする。で、7人の浪人を雇ったが、野武士との戦いが始まると農民の男たちも竹槍を…

学問の領域と政治の領域

2015年に米国などの日本研究者187人(当初)が発表した「日本の歴史家を支持する声明」の文中に、「多くの国にとって、過去の不正義を認めるのは、いまだに難しいことです」とあり、“歴史認識”の問題が日本にだけあるわけではないことを認めている。が、日本…

ドキュメント「パンデミック6月」

世界における新型コロナウイルスの感染者数は 6月1日に610万人を超え、30日には1030万人を超えた。死者数は1日に37万人を超え、30日には50万人を超えた。ブラジルやロシア、インドなどで感染爆発が続き、米国では南部などで感染が拡大した。一方、欧州を…

自由に歌う

歌は自由なものである。どのようなメロディで歌おうと、どのような歌詞で歌おうと、どのようなリズムで歌おうと個人の自由である。鼻歌ならば誰でも勝手に歌うのが当然だろうが、流行歌も自由に歌っていいいとみなす人は少ない。だが、流行歌だって、歌う人…

事実に対する誠実さ

2015年に米国などの日本研究者187人が発表した「日本の歴史家を支持する声明」の目的は何だったのか。声明は、第二次大戦後の日本の歩みを肯定的に評価しながら、世界から祝福を受けるにあたっては障害となるものが歴史解釈の問題で、最も深刻な問題の一つが…

選挙運動としての議会

二つか三つの政党が議員数で拮抗していて、選挙の結果で政権交代がよく起きる状況なら、変化する民意をよく反映しているといえるだろう。それは、政党も政治家も主権者の判断で“取り替え”可能になっている状況であり、「実績」を主権者に示し続けなければ選…