望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

操作できる平均気温

 東京での気象観測地点が2014年12月2日に、大手町の気象庁庁舎から北の丸公園に移された。この移転に伴い気温などの平年値も変更され、年間の最低気温は従来より1.4度低くなり、年間の平均気温は16.3度から15.4度に下がる。夏より秋や冬の方が差が大きく、夏は熱帯夜が減り、冬は冬日が増えるという。

 温暖化により数十年後には、平均気温が1度上がるとか2度上がるとか大騒ぎするマスコミが、この平均気温の低下には冷静だった。過去30年の気象データにより気象庁は平年値を定めているが、今回の気象観測地点の移転に伴って、北の丸公園での2年間の観測データをもとに平均気温を変更した。

 大手町の気象庁庁舎はアスファルトの道路やビル群に囲まれていたが、森林公園として整備された北の丸公園には芝生や池があり、樹木が茂る。車も人出も多く、多数のエアコンからの排熱が多いビル街から、周囲の自然が豊かな公園に入って日陰で休むと、多くの人は涼しく感じよう。観測データとしての気温が低くなるのは当然かもしれない。

 気温は測定場所の環境に影響されるが、世界各地で測定されている気温観測の環境に、一定の基準のようなものがあるのだろうか。都市化は世界でも進んでおり、世界の気象観測地点の多くが都市部に偏在していて、ヒートアイランド現象の影響を受けているとすれば、温暖化を示す観測データが多く出るだろう。

 米の海洋大気局(NOAA)などが、2014年の世界の平均気温は、記録が残る1880年以来最も高かったと発表した。多くの人は、公共機関の発表なので温暖化は観測データにより裏付けられていると信じるだろう。しかし、これらの発表には仕掛けがあると英国のテレグラフ紙が報じた。

 NOAAの気温データベースの観測地点は、以前は1万2千地点ほどあったが、1990年ごろを境に6千地点以下に半減し、残った観測地点の多くは都市だという。さらに、観測地点の変更に伴うデータの調整において、都市部のデータの比重が増したことを受けて気温を高めに調整したともいうので、気温上昇を示す「データ」ばかりが発表されることになる。

 地球の平均気温は上がっているとされるが、その気温データの観測が世界各地で、どんな場所で、どんな環境の中で行われているのか、検証が必要だな。数字は現象を客観的に示すデータと受け止めがちだが、数字が、実はどうにでも操作可能であったり、様々な解釈ができたりすることは珍しいことではない。