望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

新しい党名

 日本では政党名に「民主」がつく政党は過去にも現在も数多く存在する。民主という言葉には肯定的な政治イメージがあるから、好んで採用されてきたのだろう。野党は好んで民主を政党名につける傾向があり、民主がつく政党数を増大させてきた。だが、民主を冠する政党の最大手は自由民主党で長らく政権を握っている。

 民主という言葉を好む政治家が多いから、民主という言葉は政党名に多く採用されてきたのだろうが、民主という旗のもとに集まった政治家が、必ず民主主義を尊重し、人民の意向を常に最大限に優先して政治活動を行っていたかというと、評価は割れるだろう。社会には常に分断があり、民主主義の解釈次第で政治家の言動の許容範囲はどうにでも広がる。

 そんな日本で民主がつく政党がまた一つ現れそうな気配だが、どんな政党名になるのか揉めている。立憲民主党民主党か……どちらにしても新鮮味は希薄だ。もちろん政党名に鮮度は必要なく、群れ集う政治家らの共有する理念を表す政党名にすべきだろうが、バラバラの主張を言い合うことを保証するのが民主という言葉なら、いずれまた分裂するだろうな。

 どうやら民主を政党名につけることでは異論はないようだから、民主を使った新しい政党名に思い切って変えてみるテもある。例えば、分裂した政治家がまた集まったのだから「再生民主党」とか「再起民主党」「再チャレンジ民主党」。新しさを強調するなら「新生民主党」、野党結集の歴史を踏まえるなら「三代目民主党」だ。

 伝統を強調するなら「元祖民主党」や「本家民主党」「本当の民主党」。当面の選挙でウケることを重視するなら「みんなの民主党」とか「我らが民主党」「あなたの民主党」。反自民の票を集める狙いなら「とりあえず民主党」とか「Go to民主党」「帰ってきた民主党」。でも、人々からは「出戻り民主党」とか「寄り合い民主党」「群れる民主党」「またまた民主党」なんて皮肉られそうだ。

 政府批判以外には“無力”な野党に対する人々の厳しい視線に、「おなじみ民主党」とか「連れ合う民主党」「ぶり返す民主党」「また集まった民主党」と居直って苦笑を誘うテもあるか。自民党政治を本当に変える政党だとせめて名前だけでも強調するためには「改革民主党」「革新民主党」などと既成政治を変えると強調するのが手っ取り早い。だが、改革や革新などの言葉は散々使われてきたから、もう色あせているかもしれないな。

 「任侠民主党」なら強そうだが、暴力団同様に離合集散のイメージもまとわりつく(政治的に暴力団を容認するような決定はできないか)。政党を渡り歩く政治家が多すぎたり、安易に新党をつくりすぎるから、民主という言葉が霞んでしまう。いっそ政党名を「最後の民主党」として、力強く、人々のために全力で励む政治家や政党の姿を年中、日常的に見せてほしいものだ。それが最強の選挙対策でもある。