望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

マスクで広告

 各国の新型コロナウイルスの感染状況を伝えるニュース映像を見ると、マスクをつける習慣がなかったという欧米などでも、公共交通や店舗内などでマスク着用が義務化されたこともあってか、出歩く人々のほとんどがマスクをしている。カラフルなマスクが多いが、最も多いのは白いマスクだ。

 日本でも、手作りなのかカラフルなマスクが増えたが、多いのは白いマスクで出歩く人の7〜8割を占める印象だ。洗って何度も使うことができる手作り布製マスクはマスクが品薄の時には重宝されたが、店頭に大量に出回るようになった現在、使い捨ての白い不織布マスクの手軽さが再認識されよう。

 いつ感染が沈静化するのか見通しはつかず、死者が各国で増えている状況なので、マスク着用が今後も長く続いていく可能性がある。感染を防ぐ決定的な対策がまだ解明されていないのだから、無症状であっても誰もが感染者だとの前提で、飛沫感染を防ぐ対策が優先され、マスク着用は欠かせないか。

 これほどマスクが一般化し、日常で見かける機会が増えたのだから、マスクの前面スペースを何かに活用しようと考える人も出てくる。笑っている口元を描いたマスクで接客している店舗があるそうだが、人々のマスク姿がいつまでも続くなら、マスク着用の「表情」を演出することは大事かもしれない。

 マスクの活用法として真っ先に思いつくのは、広告を掲載することだ。マスク不足から様々な業種のメーカーがマスク生産に乗り出して強気の価格で販売し、売れているという。それらのマスクにはメーカーのロゴが入っていたりし、ちゃっかりPRの役目も果たしている。ファッションアイテムとして受け入れられたのだろうが、原価は低いだろうから無償で配ったとしても損失は少ないだろう。

 マスクの前面に商品名や企業名などを大きく表示したマスクは、それをつけた人が街中を歩き、電車やバス、地下鉄などに乗ることで一定の宣伝効果はありそうだ。商品名や企業名を表示したマスクをわざわざ買う人は少ないだろうが、着用して外出することを条件に希望者に無償で送付したり、ポケットティッシュのように街頭でランダムに配ったりする宣伝戦略はある。

 政権に食い込んで甘い汁を吸っている広告代理店なら、マスク広告で儲けるチャンスを逃すはずがない。「ピンチをチャンスに」と企業を丸め込み、感染が続く状況を利用して広告代理店は儲けようとするだろう。だが、マスクの前面スペースは企業や広告代理店のためだけにあるのではなく、個人がメッセージを記してもいい。今の米国なら「BLM」と記したマスクは人々に喜んで受け取ってもらえるだろうな。