望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

動いている地表

 2015年4月25日にネパールでM7.8の地震があり、周辺のインドや中国、バングラデシュを含めて死者は8500人を超え、全半壊の建物は57万棟、政府施設の全壊も1万以上と甚大な被害になった。震源に近い首都カトマンズでは世界遺産の歴史的建造物が崩壊し、観光客のキャンセルが相次いで主要産業の観光業に対する打撃は大きい。

 ネパールの面積は北海道の1.8倍で、人口2600万人余。GDPは約221億ドル、1人当たりGDP約703ドルの後発開発途上国で、GDPの約34%及び就労人口の約66%を農業に依存。各国政府・国際機関から多額の開発援助を受けている(外務省サイトから)。大地震後の経済再建に必要なコストは50億ドル以上で、ネパールのGDPの2割に相当するという。

 ヒマラヤ山脈を国土に含むネパールは、ユーラシアプレートと、南側から北上するインド・オーストラリアプレートの衝突帯の上にあり、そこで地震が起きた。震源の断層は東西150キロ、南北120キロに及び、場所によっては4m以上ずれたという。

 地球の地殻が十数枚のプレートに分かれていて、それらが移動して押し合っているため地震などが起きるというのは「地震多発国」日本ではお馴染みの説明だろう。インド・オーストラリアプレートは北上を続け、インドがユーラシア大陸に衝突してヒマラヤ山脈チベット高原が形成されたのだが、その動きは続いていてヒマラヤは今でも年々高くなっているというから、自然界のエネルギーは巨大だ。

 日本でも、北上するフィリピン海プレート上にある島が本州にぶつかって伊豆半島となり、丹沢山地が形成されたというから、「国の形」は常に変化の中にある。さらにプレートに乗るオーストラリアも北上を続けていて、0.5億年後には日本列島に衝突し、ボルネオやフィリピン、日本列島などが巨大山脈を形成するというから、今のネパールと似た環境になっているかもしれない。

 陸地の形が一変する0.5億年後の地球は、どんな世界なのだろうか。約500万年前に猿人が現れ、約170万年前に原人が出現し、約20万年前に、現世人類の直接の祖先となる新人(ホモ・サピエンス)が現れて生命をつないできたのだが、0.5億年の人類はどんな形態で存在し、どんな文明をつくっているのか(想像もつかないが、見てみたいなあ)。

 地球上で1.6億年以上も繁栄した恐竜は滅びたが、代わりに哺乳類が栄え、人類が栄える。そんな様々な生命を乗せて、地表は動き続ける。地球も社会も常に変化しているのなら、固定した世界観にとらわれていては見えないものが結構ありそうだ。