望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

レバニラ丼

 日本の飲食店には多くの丼ものメニューがある。天ぷら屋には天丼やかき揚げ丼、寿司屋には鉄火丼やマグロ漬け丼やマグロ山かけ丼、ウナギ屋にはうな丼やうなたま丼、焼肉屋には焼肉丼やカルビ丼、中華屋には中華丼やマーボー丼や天津丼があり、食堂にはカツ丼、親子丼が欠かせないが、さらに各種の丼ものメニューを増やしている店は珍しくない。

 牛丼のチェーン店は全国に広がり、多くの飲食店がメニューに取り入れた。海辺の街では海鮮丼やシラス丼、うにイクラ丼などが名物という飲食店などが観光客を集め、豚丼など地方の名物丼が人気となって全国に広まった丼飯もある。鶏肉の代わりに豚肉を使った他人丼も一般化し、ルーローやビビンバなど台湾や韓国の人気メニューも日本で丼飯になっている。

 白米に何かの具材を載せれば丼飯が出来上がるので、新たな丼飯は増え続ける。カレーを乗せればカレー丼の出来上がりで、チャーシューを乗せればチャーシュー丼、すき焼きを乗せればすき焼き丼、豚キムチを乗せれば豚キムチ丼、牛ステーキを乗せれば牛ステーキ丼、生姜焼きを乗せれば生姜焼き丼、ジンギスカンを乗せればジンギスカン丼、焼き鳥を乗せれば焼き鳥丼、唐揚げを乗せれば唐揚げ丼などと新メニューの開発の苦労はないように見える。

 家庭でも、スクランブルエッグを乗せればスクランブルエッグ丼、缶詰の焼き鳥と卵を炒めて乗せて親子丼、また、豚肉やひき肉と卵を炒めて乗せたり、缶詰のツナとキムチを混ぜ合わせて乗せたり、納豆にネギやマグロの中落ちを混ぜ合わせて乗せたり、肉じゃがの残りを卵でとじて乗せたり、唐揚げやコロッケなど残り物を卵でとじて乗せれば丼飯の誕生だ。卵があれば、玉ねぎやネギ、ニラなどと炒めるだけでも具材となる。

 何かの具材を載せれば丼飯が出来上がるので、新作は次々と創作できそうで、丼飯は無限に増えそうだ。卵かけご飯も丼飯に似ているが、茶碗の白米に生卵を割って乗せるのが一般的で、丼ものとはちょっと違うか。丼ものの定義は①器は丼を使う、②白米の上に具材を乗せて覆うーだろう。ぶっかけ飯がイコール丼飯ではない。

 また、焼きそばを乗せれば焼きそば丼、お好み焼きを乗せればお好み焼き丼、ざる蕎麦を乗せればざる蕎麦丼、チャーハンを乗せればチャーハン丼、肉まんを乗せれば肉まん丼の誕生ーなどとはならないだろう。丼の白米に乗せるのは、おかずとみなされるものに限られる。西洋料理のおかずでも丼ものが創作できそうだが、白米を食べる習慣が乏しい歴史もあってか、西洋料理と丼ものの相性はあまり良くないようだ。

 全国には独自の丼ものを提供している飲食店がありそうだ。おかずになるものなら何でも白米に乗せることができるのだから丼ものの世界は広い。中華料理にはまだ丼の白米に載っていないおかずが多く、そのうちにレバニラ丼とかエビチリ丼、酢豚丼、キクラゲ卵豚肉炒め丼など出てきそうだ。和食店なら焼き魚や煮魚の身をほぐして乗せた焼き魚丼とか煮魚丼、様々な自家製の漬物を刻んで乗せた漬物丼か。