望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

植民地と侵略者

 こんなコラムを2000年に書いていました。

 オランダを訪問した天皇を迎えたベアトリックス女王夫妻主催の晩餐会で、「今なお戦争の傷を負い続けている人々のあることに深い心の痛みを覚えます」などと述べた天皇に、女王は「多くの人(オランダ人)がその体験を引きずり続けています」「私達が共有する歴史の辛い一章から目をそむけてはならない」などと述べたそうだ。

 元抑留者の団体が日本政府に対して賠償請求訴訟を起こしているそうで、彼らの反日感情はかなり強いそうだ。ただオランダでは、抑留者が100%被害者なのか、なぜオランダ人が現在のインドネシアにいたのかーなどという視点からの議論も出ているそうだ。

 戦前の日本の国家体制は批判されなければならないが、抑留者の恨みの大本は、現インドネシアの植民地支配を巡る日本、オランダの帝国主義の戦いでオランダが日本より弱かっただけのことで、道義的に日本がオランダより劣っているとはいえまい。道義を持ち出すなら、どっちもどっち、か。

 オランダ人が一方的に被害者を演じて日本批判することが、第三国からはどう見えるのだろうか。

 インドネシアで、政情が落ち着いたなら、インドネシア人を含めてシンポジウムを開いてみたらどうか。「インドネシアにおける植民地支配の時代」のテーマで、オランダがインドネシアインドネシア人に行ったこと、日本がインドネシアインドネシア人に行ったこと、日本がインドネシアでオランダ人に行ったこと、オランダがインドネシアで日本人に行ったことについて、それぞれ検証すればよい。

 日本は欧米に倣ってアジアで植民地支配を行ったが、19世紀、20世紀の植民地支配について根本的検証を行うなら、日本を含めて各国の歴史が「公式」のものとは少々違った具合に見えてくるだろう。

 その第一歩は日本自らを厳しく検証すること。それでこそ歴史の再検証を呼びかける資格が生まれる。えっ、それじゃ無理だって? そうか。それじゃ、各国の戦争体験者が死ぬまで日本は「おわび」し続けるのか。