望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

自由と世論調査

 日本と韓国で民間団体が行った共同世論調査で、人々が互いに厳しく相手国を見ていることがまた示された。現在の日韓関係について、「非常に悪い」「どちらかといえば悪い」は日本54.7%で昨年比8.8ポイント減だったが、韓国88.4%で22.3ポイント増加した。現在の韓国政府に日韓関係の緊張を緩和しようとの姿勢が見られないので、関係が悪いと両国の人々が見るのは当然か。

 だから、相手国の印象が「良くない」「どちらかといえば良くない」は日本46.3%で3.6ポイント減だが、韓国71.6%で21.7ポイント増と、韓国で日本を一層厳しく見るようになっている。「良くない」理由は韓国では「韓国を侵略した歴史について正しく反省していない」61.3%、「独島をめぐる領土対立」45%、「日本の政治指導者の言動に好感を持っていない」24%。

 植民地支配は悪であり、韓国は侵略された被害者であるというのが韓国側の「公式」な歴史認識のようだ。そうした歴史認識に基づく教育を受け、そうした歴史認識による韓国内の報道にさらされている人々は、植民地支配を行った日本に対して基本的に否定的な感情を持つだろう。韓国で世論調査を行うと、日本に対する印象が「良くない」が多数になるのは当然か。

 日本側での「良くない」理由は、「歴史問題などで日本を批判し続ける」55.7%、「竹島をめぐる領土対立」29.4%、「慰安婦合意をめぐる対立」23.3%。韓国側の「公式」な歴史認識が人々の日本に対する否定的感情を刺激することで成り立つ構造だとすると、韓国の人々は日本に対して批判的であり続ける。だから「日本を批判し続ける」ことに対する日本側の反発も続く。

 互いに相手国に批判的なのだから、日本と韓国で世論調査を行うと互いに厳しく相手国を見ている結果になる。だから、厳しく見ているとの結果にニュース価値は乏しく、その回答パーセントの上下の動きを時々の外交状況と絡ませて報じるしかない。でも、「良くない」が増えた減ったと大きなニュースに仕立て上げることができるのだからマスコミにとっては便利な世論調査だ。

 世論調査で答える人々が、個人の考えよりも、社会で規範とされる認識に合わせて「正しく」答えるのなら、世論調査の結果には国家の意向が強く反映する。例えば、米中で共同世論調査を行ったとしても、自由な個人の意見の表明が制約され、反逆罪も控えている中国では、答える人々の多くは社会的に「正しい」とされる回答を選ぶだろう。つまり、結果は米国批判のオンパレードになる。

 個人の意見表明が自由であるから世論調査は成り立つ。植民地支配は悪=日本は悪との「公式」な歴史認識が韓国で定着しているならば、「公式」な歴史認識を批判する意見表明も自由で許容されていることが、この種の世論調査を実施する前提となる。世論調査が結果として韓国の「公式」な歴史認識の主張を伝えるだけなら、韓国政府の対日外交を助けているだけだ。