望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





みな日本人になった


 110年ほど前に日本では、幸徳秋水らが逮捕され、大審院大逆事件の第1回公判が開始された(傍聴は禁止)。パリ、ロンドン、ニューヨークなどでは社会主義者らが大逆事件に抗議するデモを行ったという。その年の8月に日韓条約が調印・施行され、日本による朝鮮半島の植民地支配が始まった。



 日韓併合100年の2010年、韓国の世論に「日本は謝罪が必要」との声もあると伝えられた。日本人は責められると簡単に謝罪するのだが、とりわけ韓国、中国などに対しては、先の戦争の負い目もあってか、日本は何度も頭を下げる。



 その当時に生まれていなかったり、生まれていたとしても子供だったりした人には、政治に働きかけて政策変更に関わることができなかったのだから、責任はないと加藤周一氏は書いていた。しかし韓国や中国はいつでも、いつまでも自分らを被害者だと吹聴して、日本の歴史的責任なるものをを言い立てる。



 香港を長く植民地支配していた英国が中国に返還する時に、「植民地支配をして悪うございました」などと言わず、今後の香港の民主主義が心配だなどという雰囲気作りしたのは、さすが、世界各地での植民地支配の年期が日本とは違っていた。



 韓国や中国が先の戦争の日本のことをいつまでも言い続けるのは、政治的に日本を牽制する外交カードとして有効だからだろうが、先の戦争の「勝者」であるはずの自分たちよりも日本のほうが先に経済的に成功したことへの妬みがあるのかもしれない。

「歴史問題」しか日本を牽制できるカードが彼らにはないのだから、いつまでも持ち出す。



 韓国人が日本に向けて言うことに、「朝鮮半島からの渡来人が日本に多くを伝えた」というものもある。まるで現在の朝鮮半島人が日本人に何かを教えたかのような言い方だが、単純なことを見ていない。古代に朝鮮半島から日本に渡来した人々は日本人に同化した。古代に朝鮮半島から日本に渡来した人々の血は、現代の朝鮮半島の人々ではなく、日本人に受け継がれている。



 北京五輪の開幕式典で中国は、火薬など古代の中国人は偉大な発明をしたと誇示したが、近世以降に中国での偉大な発明が乏しいことを見ると、古代の創造性に富んだ中国人は徐々に朝鮮半島に移り、やがて日本へと移って、日本人に同化したんじゃないかなんて冗談半分に思いたくなる。独自の技術力と創造性があったから日本人は、アジアで近代化にいち早く成功した。



 中世以降、欧州人は世界各地に植民地をつくり、20世紀にはアメリカとソ連(欧州ロシア)が世界を制した。今、そうした世界の勢力図が大きく変わりつつあり、アジアが世界経済の中心になるといわれるが、「歴史問題」で思考停止になる韓国や中国から、政治面でも世界を動かす構想が出てくるのだろうか。



 少なくとも第2次大戦後の欧米主導の世界秩序から脱することがアジア発の新構想の最低条件だろうが、一方でヤルタ・ポツダム体制にしがみつき、被害者をいつでも、いつまでも演じたがっているようでは、中国や韓国に多くを期待すべきではないだろう。