望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

首相公選制と議員公選制

 「首相公選制にすべきだ」との議論が盛んだったことがある。密室で自民党の有力者らが決めた首相がアホで、それを議会が辞めさせることもできないという現実への苛立ちから、それなら直接選挙で首相を決めようと一定の支持があったようだ。

 どうすれば、見識のある有能な実行力のある人物が首相に選ばれるのか。

 現在は、有権者の直接投票で国会議員を選び、その議員が首相を選ぶという制度。言ってみれば議員公選制だが、選出された議員に対する評判はあまり高いものではないようだ。有権者のほうにも、各種のしがらみなどがあって国会議員選挙では選択の幅が狭められているとか、投票する選挙区ではろくな(失礼)候補がいないといった事情があるのかもしれないが、首相公選制にしたなら、見識のある有能な実行力のある人物が首相に選ばれる(有権者が選ぶ)というものでもあるまい。

 制度を制度に代えたからといって、有権者の意識が変わらなければ、首相公選制導入でも何も変わるまい。むしろ改革などと声高に言う連中にうまく利用されるだけーなんて気がするぞ。国会が形骸化せず機能していれば首相公選論は出て来なかったのではないか。

 首相公選制導入より現在の公選された議員がしっかりすることのほうが現状を改革する近道だ。自民党を例にとると、総裁選を改革し、派閥力学ではなく、見識のある有能な実行力のある人物が総裁に選ばれるような政党になり、各党のそうした見識のある有能な実行力のある候補が首相の座を争うということになれば、首相公選制導入の意味はなくなろう。

 こう書いてくると、首相公選制も現実味のない話だが、公選された議員がしっかりすると期待するのも、同じような現実味のない話に思えてくる。