望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





素朴な疑問

 素朴な疑問を持つことは、簡単に騙されないためのヒケツかもしれない。例えば、高利回りが期待できるという利殖の勧誘電話などがかかって来た場合、「そんなに儲かるんなら、自分達だけで儲ければいいのに。どうして他人に勧めるの?」と聞いてみる。



 電話をかけて来た相手は、「私どもは利を求めるような生き方はせず、ひたすら他人の幸福のために貢献したいんです」などとはまず答えない。いかに有利な投資かという方へ話を持って行こうと焦りつつ、「お客様に大きく儲けていただき、私どもは手数料だけを頂きます」なんて答える。ならば「手数料を狙うより、貴方達だけで大きく儲けた方がいいのに。貴方達はお金がないんじゃないの?」と聞くと、たいてい電話は切れる。



 例えば、国会議員を80人削減すると政党が言う案。いかにも政治家自身が「身を切って」いるかのように映るが、「目的は本当は何?」と素朴な疑問が生じる。政党が言い出すということは、いかに国会議員にお粗末でヒドい連中がいるのかを、身近で実際に見ているからか?

 

 そうだとは政党は決して言えないだろうから、「多くの借金を抱えている国家財政の負担を少しでも軽くするため」などと答えるだろうが、国会議員80人分の人件費を節約しようとするなら、議員数を減らさずに、議員報酬などを、例えば一律2割削減する方法などもある。総人件費は削減できる。



 国会議員を80人削減する場合、選挙という関門がある。「不要」「無能」な候補者が選挙で淘汰されるならいいのだが、選挙は魔物、選挙に強い候補者や「風」をつかんだ候補者が勝つ。「必要」「有能」な人々が選挙を勝ち抜いてくるならいいが、そうなるとは限らない。



 国会議員を80人削減したのはいいけれど、選挙に強い「不要」「無能」な連中が当選して来て、そうした連中の比重が高まり、国家議員の総体的な劣化につながるようでは、何のための80人削減か、わからなくなる。80人削減案って本当にいいのか、素朴な疑問への答えは示されていない。



 一儲けしようという意図を隠し、あるいは自分らに都合良く制度を変えようと、お為ごかしで作りごとの奇麗ごとを言い立てる手合いには、用心した方がいい……が、欲につられたり、期待をかけすぎたりすると、つい騙される。