望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

人権侵害の実態

 新疆ウイグル自治区中国当局が、ウイグル人らに対する多様かつ過酷な人権侵害を行っているとの情報は以前から流れていたが、外国人の立ち入りが厳しく規制されていることもあって実態は隠蔽されていた。外国からの批判に中国は激しく反発するが、「どこでも自由に見てください」とは決して言わなかった。それは、自由に見られては都合が悪い実態があるからだろう。

 アムネスティは昨年公表した報告書で、中国政府がウイグル族やカザフ族などイスラム教徒の少数民族に対し、集団拘束や監視、拷問をしていたと批判した。拘束されていた55人への聞き取り調査を基にした報告書によると、▽新彊ウイグル自治区全域に精巧な監視体制を敷いている、▽実態は強制収容所である巨大な「再教育」施設群がある(施設内では、組織的に虐待や暴力行為が行われ、収容された人は厳格に管理され、宗教色を排除した単一の中国人国家の考え方と共産党の理念を徹底的に植えつけられる)。

 ▽2017年から数十万人が強制収容所に入れられ、数十万人が刑務所に送られた、▽取り調べでは、鉄製の椅子に座らされて手足を拘束され、頭部にフードをかけられる、▽生体認証データや医療データを取られた後、強制収容所送りになる、▽収容所内での最初の数週間から数カ月間は、一切の私語は認められず、監房内では常に座位を強いられる。

 ▽拷問では、殴打、電気ショック、独居拘禁、食事・水・睡眠のはく奪、器具を使った拘束、極寒の部屋での隔離などが行われる(丸1年も手かせ足かせを付けられていた人、拷問を受けている人を見せつけられた人、仲間の目の前で椅子に拘束されたまま尿や便をもらすこと三日三晩の人などもいたという)。

 ▽解放された後も少なくとも数カ月間は常に機器や人による監視を受ける(当局員に自宅に上がり込まれ、寝泊まりまでされて調べられた人もいる)、▽拘束後解放された人たちは移動の自由を厳しく制限される(至る所にある検問所の警官が街角を見回り、監視する)、▽イスラム教の宗教的・文化的慣習は過激主義的とみなされ、拘束の対象になる(イスラム教式のあいさつは許されず、コーラン、礼拝用マットなどの物品を所持することも事実上禁止)、▽モスクや墓跡などの宗教的・文化的遺産が自治区全域で取り壊された。

 こうした人権侵害は国連人権高等弁務官事務所が8月31日に初めて発表した報告書でも指摘された。報告書は「テロや過激派対策の名目で拷問や虐待など深刻な人権侵害が実施されている」とし、世界の企業に対して人権侵害を助長していないか再点検するよう求め、ウイグル族らの人々に対する人権侵害は「国際犯罪、特に人道に対する罪に当たる可能性がある」とした。

 中国は報告書の発表に反対を表明し、「反中国勢力が捏造した偽情報や虚偽に基づき、中国に非があることを前提にしている」「中国の法律や政策を歪曲し、誹謗中傷している」とした。だが中国の主張に説得力は希薄だ。それは中国が実態を隠しているとの疑惑が消えないからで、疑惑を晴らすには新疆ウイグル自治区において外国人の自由な検証を実現するしかない。それができない現状が中国の主張の信憑性を傷つけている。