こんなコラムを2003年に書いていました。
電話が鳴って、「はい、小泉でございます」
「オレ、オレだけど、困ったことになったんだ」
「純ちゃん?」
「そう、そう。実は金が要るんだ。助けてほしい。必ず返すから貸して欲しいんだ」
「えっ、どうしたの? 何があったの?」
「知り合いのブッシュが、フセイン一家に殴り込みをかけて、徹底的にやっつけて、フセイン一家を始末したんだ。ところが、方々に散らばったフセイン一家の残党に狙われて、ブッシュ一家もかなり殺られている。オレもブッシュに声を掛けられて、殴り込みには行かなかったが、フセイン一家の事務所の片づけには行くつもりだった。でも、こう物騒じゃ、行けたもんじゃない」
「そんなとこ、行くこと、ないよ」
「でも、ブッシュ一家は強えから、片づけでも手伝わなければ、この渡世で生きていけなくなる」
「悪い仲間とばかり、つきあっているから、そんな目にあうんだよ」
「……それでね、ブッシュは、片づけにも来ないんだったら、陣中見舞いをもっと出せと言うんだ。この殴り込みでは、オレは他の奴らの倍も金を出したのに、もっと出せと言うんだ。出せなきゃ、フセイン一家の事務所に行って片づけをしなけりゃ義理が立たず、事務所に行けば、何が起こるか判らない」
「そんな連中とは縁を切って、まともに生きることを考えなさい」
「そんなわけには行かないんだよ。オレの身内だって喰わしていかなきゃ、ならないんだから。でも、オレは怖いんだ。イタリア一家の助っ人もフセイン一家の事務所で殺されたっていうし、フセイン一家の事務所に行けば、きっと、オレ、殺されちまうよ。助けて欲しい。頼むよ。死にたくないんだ」
「…お金を出せば、そのブッシュとかいう奴は、お前を見逃してくれるのかい?」
「そうなんだ。振り込んでくれるかい?」