望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

代替案を出せ

 こんなコラムを2004年に書いていました。

母親「イラク派兵には反対よ。危険なところにわざわざ行く必要はないし、奥さんや親御さんの気持ちを考えると、可哀想だわ」

長男「僕も反対だ。国際貢献は必要かもしれないが、アメリカが始めたこの戦争には大義名分がない。日本は国連中心だと言っていたはずじゃないか」

父親「おまえらは現実が解っていない。日本が経済大国だと言っていられるのは、アメリカへの輸出で稼がせてもらっているからだ。そのアメリカが自衛隊イラクに出せと言って来たんだから、出さずに済ませられるわけがない。理屈は、何にでも、何とでもつく。今はアメリカの機嫌をとっておくのが賢明なやり方だ」

長男「そんなの、卑屈じゃないか」

父親「なに、お前はいつから右翼になったんだ。そんなことを言うなら、代案を出せ。代案を」

長男「……」

父親「そら、みろ。反対ばかりで、代案を出せもしない」

母親「反対の意志をはっきり表明することが大事なのよ。賛成か反対かも自分でよく判らないという人間じゃダメよ」

父親「俺が言っているのは、反対なら代替案を示せということだ。ただ反対だけじゃ建設的な議論にならないじゃないか」

母親「それって、政府支持の人達がよく使う論法よね。自分達は政府の言ってることをなぞるだけだから、苦労はない。政府を隠れみのにして、対案を出せと相手を攻撃していればいいんだから、有利な立場よね」

父親「そんなことはない。俺だって、それなりに考えてるんだ」

母親「そうかしら。じゃ、あなたが考えた案と政府の出した案が偶然一致したのかしら。それとも、政府の見解を理解することから考え始めたのかしら」

父親「給料のためなら、いやな奴にでも頭を下げなくてはならないというのが現実だ。おまえらは、そこらが解っていない。俺が何の苦労もなく給料を毎月持って来るとでも思っているんじゃないか」

長男「代案、代案って、えらそうに言うなよ。親父だって、自分で考えたわけでもないくせに」

父親「なに、もう一度言ってみろ」