グローバリズムは、国境を越えたモノ・マネー.ヒトの自由な移動を実現し、世界の構造を変えるとともに各国の政治・経済・社会にも大きな影響を与え、各種の変化を生じさせた。欧米日などから工場が中国などに移転し、各国内では非正規雇用が増大して中産階級が解体され、格差が拡大するとともにマネーは自由に世界を動き回り、富める者はますます富を増やし、既成の政治に対する人々の不満を増大させ、変革の方向を巡って社会の分断を可視化させた。
欧米などで既成の政治を主導していたリベラルなエリートが実は富裕層であり、理念先行の政治やグローバリズムが人々の利益には必ずしも合致していなかったことが暴かれ、人々の政治不信に拍車をかけた。リベラルなエリートが大衆層を代表できなくなっているとエマニュエル・トッドは近著で次のように説く(「西洋の敗北」。適時省略あり)。
「思想面と感情面において、エリート主義とポピュリズムという二つの陣営が激突する。エリートは、民衆が外国人嫌いへと流されることを非難する。民衆は、エリートが常軌を逸したグローバリズムに耽っているのではと疑う。民衆とエリートが、ともに機能するために協調できなくなれば、代表制民主主義の概念は意味をなさなくなる。すると、エリートは民衆を代表する意思を持たなくなり、民衆は代表されなくなる」
「世論調査によれば、西洋民主主義国の大部分において、ジャーナリストと政治家は最も尊敬されていない職業だという。陰謀論が蔓延しているが、これはエリート主義対ポピュリズム、すなわち社会の相互不信によって形成される社会システムに特有の病理なのだ」
「民主主義の理想は、人々の社会的条件をなるべく近づけるという概念を含んでいた。第二次大戦後、民主主義が絶頂にあった時期には、アメリカを始め多くの国でプロレタリアとブルジョワが、大規模になった中流階級の中に溶け込むことすら想像できたのだ。ところが、私たちが直面してきたのは、格差の拡大である。自由貿易によってもたらされたこの現象は既成の諸階級を粉砕したが、同時に物質的生活条件も悪化させ、労働者階級だけでなく中流階級の雇用へのアクセスまでも悪化させた」
「今日の民衆の代表者、つまり高等教育を受けた大衆化したエリートたちは、第一次産業および第二次産業に従事する人々を尊敬しなくなり、どの政党に属していようが、根底では、自らが高等教育で身につけた価値観こそ唯一正当なものだと感じている。自分はエリートの一員であり、その価値観こそが自分自身であり、それ以外は何の意味もなさず、虚無でしかない。こんなエリートなら、自分以外の何かを代表することなど絶対にできないであろう」
民衆の支持を失い、民衆とのつながりが希薄化したエリートとは現代の貴族階層だ。民衆からの支持という正当性を失ったエリートに人々が我慢できなくなれば、ポピュリストが民衆の代表者にふさわしいと見えても仕方がない。人々は自分らの代表を求め、それがトランプ氏になったりもする。トランプ氏も現代の貴族階層に属するが、粗野な振る舞いを隠さず、エリート臭は希薄だ。ポピュリストが選挙で選出されるのは、現状を変えたいという人々の意向の強さと絶望の深さを示している。