自分や家族の健康状態や仕事関係など身の回りのことから政治・経済の動向、社会情勢、天変地異、国際情勢など、この世界は常に様々な変化の中にあり、将来、何が起きるのかは誰も知らない。1日先のことも数年先のことも未来を知ることは誰にもできないが、過度な不安にとらわれず、明日も平穏な日であると大方の人は思っているに違いない。
一方で、何か悪いことが起きるのではないかと不安を感じることは誰でも経験しているだろう。体調不良が続いたり、近隣で犯罪が起きたり、地震や集中豪雨があったり、食品や日用品の値上がりが続いたり、近隣諸国で戦火の兆しが現れたり-など、不安を生じさせる何かの兆候は絶え間なく発生する。
不安を煽るビジネスがある。健康食品などのCM・広告の多くは、体のどこかの不調や不具合を意識させ、商品を売り込む。そんなCMに接してから病気などの不安を感じるようになったり、健康体でいることが必要だと思うようになるのかもしれない。生命保険や損害保険も何らかの不安を煽ることで、商品を売る仕組みだ。「備えあれば憂いなし」だが、将来に対する憂いを持たせて「備えさせる」商売だ。
SNSなどの普及で、「地震が起きる」「ワクチンは危険だ」など不安を煽る情報が増えた。根拠が示されなかったり、あやふやな根拠が示されたりと、信じるに値する情報なのか定かではなくても、不安だけは植え付けられる。デマだと笑い飛ばすのがいいのだが、精神の余裕が乏しければ笑い飛ばすことはできず、不安の種を植え付けられる。
根も葉もない多くのデマと違って、特定の方向へ意識を向けさせようとするデマがある。代表がプロパガンダに利用されるデマで、特定の人々や政党や組織や国などへの疑念や不信感を煽り、植え付けようとする。同じような内容のデマを執拗に大量に流すことで、関心を持った人は同じような内容の情報を受容し続けて洗脳される。これは何らかの危機感を抱かせるために有効だ。
危機感を煽る情報に感応しやすくなった人々は、危機感を新たに煽る情報を素直に受容する。危機感が刺激され続け、何らかの不安につきまとわれる。不安を感じることは不安定な精神状態だが、常に不安を抱くことが常態化すると、危機感を煽る情報を吟味することはなおざりになり、抱いている不安が自分が抱く危機感を正当化するので、不安は増すばかりとなる。
「テレビの天気予報は見なくなった」と友人。外出するときに天気は気にならないのかと聞くと、スマホで天気を調べる程度だ。「親切なつもりかもしれないが、特に雨関係などの予報は不安を煽り立てているようで鬱陶しい」と友人。各地での集中豪雨を予報できず多大な被害を出したことが続き、警戒を促す方向へ予報体制が変わったようだが、「言葉だけで危機感を煽るのではなく、予報の精度をもっと高めるように努めるべきだ」と友人は、危機感や不安を煽ることが増えた天気予報を批判する。