望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

それ行け自衛隊

 こんなコラムを2004年に書いていました。

格さん「ご隠居、いよいよ出陣でさあ。なんせ、世界1強い米軍が相手だから、そう簡単に事は運ばないだろうが、日本軍には頑張ってもらいてえ」

黄門 「いったい何のことだね?」

格さん「知らないんですかい? アメリカが握ったイラクの石油資源を日本が奪うために日本軍が出陣を始めたんでさあ。日本軍がイラクで米軍と戦闘を始めたなら、きっとイラクの連中も我がほうに協力するはずだ。アジアから米国帝国主義を追い出して、アジア解放を実現し、イラクの石油は日本が確保する。こいつは春から威勢がいいことになりそうだ」

助さん「また、間違えてやがる。いいかい、自衛隊イラクに行くのは米軍に協力するためだ。戦うとしても、相手は米軍ではなく、イラク人やゲリラとだ」

格さん「なんだ、つまらねえ。おかしいと思ったんだ。日本軍や日本政府に、アメリカと一戦交えるほどの根性があるはずもねえのに。だから、よっぽどイラクの石油資源を日本政府が欲しいんだろうって思ったんだが」

黄門 「アジア解放、か。懐かしい言葉だね。昭和は遠くなりにけり」

格さん「まったく、遠くなりにけりでさあ。なんでイラクなんて遠いところにわざわざ行くんですかねえ。アメリカに見てもらいてえなら、アメリカに行けばいいものを」

助さん「また、訳のわからねえことを言い出しやがった。アメリカに自衛隊が行ったって、やることがねえだろうが」

格さん「イラクに日本軍が行って何をやるのか、おめえは知ってるのかい?」

助さん「いろいろあらあな。大まかに言えばだな、米軍がずたずたにしたイラク人の生活関連の立て直しだ」

格さん「するってえと、米軍が勝手に始めた戦争のツケを日本が払うということかい。おかしいや」

黄門 「理屈は関係ないのさ。アメリカは戦争の後始末なんて、やる気はあまりない。日本には自衛隊をもっと“立派”にしたがってる連中がいる。そいつらが機に乗じたということだ」

助さん「そういえば、イラクの人々を助けるために自衛隊を派遣すると政府は言うが、当のイラクの人々がどんな状況に置かれているのかについては議論されてねえ。自衛隊の安全ばかり議論している印象だ」

黄門 「この戦争でイラク人は何人死んだか、負傷者はどのくらいいるのか、破壊された家屋はどのくらいか、ライフラインの状況など、支援に行くと言うなら、そんな基本的データを集め、それに基づいて支援策を講じて出かけるべきだが、自衛隊派遣予定地の治安状況が最優先の収集データになっているような印象だな」

格さん「それみろ。顔見せに行くだけじゃないか」