望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

不幸な日米関係

 こんなコラムを2004年に書いていました。

 「むかし天皇、いまアメリカ」という言葉があります。そのご威光には逆らえない、下々は黙って従え、てな調子でひたすら判断停止、従属を求める政治的「ジョーカー」のことです。近年でも、どこかから「ショー・ザ・フラッグ」がアメリカの意向だと言い立てられると、途端に日本人はオロオロしてしまいました。

 坂口安吾が書いていました。天皇を最も利用した奴らが最も天皇を敬っているふりをしていたと。アメリカについても同じことが言えます。親米(従米)を口にする政治家、官僚が最もアメリカを利用しています。

 アメリカの文化は音楽、映画、スポーツなど大量に日本に流入しています。好みは人それぞれですが、それらへの強い反感は日本にはないようです。アメリカの庶民相手に練り上げられたアメリカ大衆文化の強さの現れでしょう。しかし、政治的な日米関係は、政府レベルはともかく、友好的で安定していると言えるのでしょうか? 強力な武力を持ち、強大な経済力を持っているアメリカには、逆らうな、逆らってもしようがないというのが一般の気持ちでしょう。

 経済的には日米は緊密です。対米輸出で日本は成長し、現在も対米輸出が多くの企業の命運を握っています。対米輸出を有利にするため日本政府は為替相場に介入、円高(ドル安)を阻止しようと年間、数十兆円規模で円をドルに代えています。その金は、ドルから円に戻せば円高になるため、ドルのまま、結局はアメリカ国債を買っています。日本では赤字国債を止めどもなく発行し続けている日本政府は、輸出企業を助けるために巨額の円をドルに代えてアメリカ国債を買い、アメリカの財政を支えています。

 現在の日米関係で幸せなのは誰でしょうか? ブッシュ政権は喜んでいるでしょう。頼りないが言いなりにはなる日本は、彼らには好都合です。軍産複合体を始めブッシュ政権と関係が深い米企業も、商売がやりやすく、幸せでしょう。日本側で幸せなのは、対米輸出で稼いでいる企業群、アメリカのお墨付きで増強をすすめる日本の防衛族といったところでしょう。

 日米関係は緊密そうに見えます。しかし、経済(カネ)のつながりを除くと、他に何が残るでしょうか? ペリー来航、太平洋戦争、戦後の占領と日米二国間は「特別」な関係でした。しかし、人々の意識において日米関係は「特別」な関係をさて、築くことが出来ているのでしょうか?