望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

カゼ薬で治す

 第七波に襲われた日本では連日、10万〜20万人台の新規感染者が出ていた。発熱外来を訪れる人は発熱が38度以上と高く、けん怠感を訴える人が多いと報じられた一方、感染者には軽症や無症状が多いともされ、陰性証明を取得する目的で検査を受けに行って陽性となって感染に気がつく人も珍しくないとか。

 感染者に占める軽症や無症状の人の割合は詳らかではないが、8割ぐらいとの推測がある(重症化や死亡者の割合は「高齢者は高く、若者は低い傾向」で、オミクロン株が流行の主体の2022年1〜2月には「重症化した人の割合は、50歳代以下で0.03%、60歳代以上で2.49%。死亡した人の割合は50歳代以下で0.01%、60歳代以上で1.99%」=厚労省サイト)。だが、第七波では連日、200〜300人台の死者数となっている。

 第七波の前の6月1日には日本の累計感染者数が約887万6千人、死者数は約30600人で死者の割合は0.0034%、7月1日には約935万5千人と約31300人で0.0033%だった。第七波が始まっていた8月1日には約1293万5千人と約32700人で0.0025%、同10日には約1490万2千人と約34300人で0.0023%、同20日には約1697万9千人と約36800人で0.0021%、同30日には約1879万7千人と約39600人で0.0021%。

 第七波が始まって死者数は大幅に増えたが、それ以上に新規感染者の増加数が大幅なので、累計感染者数に対する死者数の割合は低下している。とはいえ、絶対数としての死者数や重症者数が増えているので、医療体制にかかる負荷は増える一方だ。欧米の感染爆発を見て、日本でもいずれ感染爆発が起きると予想して医療体制の整備を急ぐこともできただろうに、厚労省の動きは鈍かった。

 ところで、仕事や海外旅行などで陰性証明を必要とする人はPCR検査などを受けるだろうが、陰性証明が必要ないなら無症状の人は検査を受けないだろう。軽症なら、感染を懸念する人は検査を受けるかもしれないが、「カゼか」と思った人は従来のカゼ対策で済ますかもしれない。PCR検査などを受けに出向かない人々は、新型コロナウイルスの感染者だったとしても感染者にはカウントされない。

 ちょっとノドが痛むとか、少しセキが出るとか、少し熱っぽいなどを感じた日が過去に何回もあったという友人はそのたびに市販のカゼ薬で対応したという。新型コロナウイルス感染を疑わなかったのかと聞くと友人は、「その疑いは頭の片隅にあったが、症状は重くなかったので、カゼ薬を呑んで様子を見ることにした」と言い、「カゼ薬で症状が治った」から「まあ、いいか」と済ました。

 友人が感染者だったかどうかは分からないが、ごく軽症の感染者であったとすればカゼ薬で対応することも可能だと示したことになる。市販のカゼ薬は、諸症状を緩和させるための解熱・鎮痛薬や抗ヒスタミン剤、鎮咳・去痰剤など複数の有効成分が配合されているが、カゼそのものを治す薬ではない。だが、諸症状をカゼ薬でやわらげ、治すことができるなら、新型コロナウイルスの初期症状か?と疑う人には市販のカゼ薬を服用する対応法もありそうだ(ただし、重症化する兆候があれば、すぐに医師に相談すること)。