望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

欧州で感染が再拡大

 世界で新型コロナウイルスの感染拡大は続いている。感染者数は3300万人を突破(9月28日現在。以下同)し、回復した人は約2300万人で治療中の患者は約910万人。死者数はほぼ100万人という惨状だ。感染しても大半の人は軽症ですむともされるが、誰が重症化するのかは不明であり、感染への恐れは消えない。

 感染者が多いのは米国713万人、インド607万人、ブラジル473万人。この上位3カ国で世界の感染者の54%と半分以上を占める。上位3カ国に続くのはロシア115万人、コロンビア81万人、ペルー80万人、メキシコ73万人、スペイン71万人、アルゼンチン71万人、南アフリカ67万人で、これが上位10カ国。南米諸国で感染者が大幅に増えており、チリも45万人と多い。

 感染拡大が一服したかに見えた欧州でも感染者が増え、各国は外出制限や集会での人数制限、都市や地域を限定したロックダウン、飲食店やスポーツジムの営業制限など規制を再び強め始め、英国では人々の買い溜めの動きも現れた。夏休み期間中の人の移動増加や学校の再開、人々の警戒心の緩みなどが感染拡大につながったとされる。

 欧州の感染者数は多い順にスペイン71万6481人(死者数3万1232人)、フランス55万7683人(3万1689人)、英国46万9431人(4万2001人)、イタリア31万1364人(3万5851人)、ドイツ28万6028人(9433人)。続いてベルギー11万4179人(9980人)、オランダ11万1552人(6372人)、スウェーデン9万1679人(5896人)、ポーランド8万8636人(2447人)、ポルトガル7万3604人(1953人)などとなる。

 スペインとフランスでは9月になって毎日の新規感染者が約1万人となるなど、この春に大騒ぎしていた頃を上回るペースだ。各国政府は今春と同様に人々の行動や経済活動などの厳しい制限で感染拡大を防ごうとするが、マスク着用義務化や行動制限などに対する人々の抗議活動が各国で公然と行われたりしていることもあって、今春と同様の効果が得られるのかは不明だ。

 感染増加の原因が、夏休み期間中の人々の移動増加や学校再開、人々の警戒心の緩みだとすると、経済活動や社会活動の再開と感染拡大抑止の両立は簡単ではなく、新型コロナウイルスと共存するしかない日常とは、感染者と死者を増やしながら経済活動や社会活動を続けるものだ。それは、新型コロナウイルス感染がインフルエンザ同様の感染症の一つに定着することでもある。

 感染者や死者の増加が続く日常に人々が慣れて特別な警戒心が薄れても、肉親や友人知人を失った人々の無念の思いは薄れることがない。新型コロナウイルスには国家権力も無力だと人々が見なしている間は抑制されていたが、各国の感染拡大抑止対策が比較検証されたなら、感染者や死者の増加を他国に比べて少なくすることができなかった政府に対する批判は提起されよう。その対策としても各国政府は、人々の気の緩みが感染拡大の原因だと指摘し続ける必要がある。