望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

Go to ロックダウン

 日本では全国で感染が拡大して新たに確認される感染者は連日2千人以上になり、累計の感染者数は15万人を超えた。軽症者や無症状者が多いとされるが、重症者も増えており、死者数は2200人を超えた。北海道で感染者が急増して第3波が襲来していると報じられていたが、まもなく東京、大阪、愛知などでも感染が拡大していることが明らかになった。

 感染者は東京で4万人、大阪で2万人、愛知で1万をそれぞれ超え、この3地域で全国のほぼ半分を占めるが、東京など首都圏1都3県の合計も7万人と全国の半分近い。大都市に限らず各県でも感染は拡大しており、感染者が100人未満は鳥取、秋田の2県だけに減った。感染者ゼロを続けていた岩手県でも感染者が連日増え、200人以上になった。感染者数が1千人を超える県は全国で珍しくなくなった。

 日本でも各国からの入国者は制限されているので、第3波のウイルスが外国から持ち込まれた可能性は少ないだろう。第3波は、感染者が多い首都圏などから各地への人の移動を増やした「Go to トラベル」の影響が大きいと見られ、更に「Go to イート」「Go To イベント」を含め人の活動活発化が感染拡大につながったのなら、新型コロナウイルスと共存する経済活動とは相当に困難なものであると見えてくる。

 全国で都道府県など自治体はそれぞれ警戒ステージを引き上げ、対応を強化した。飲食店に営業時間短縮などを要請し、マスク着用や3密回避などを人々に呼びかける一方、重症者の増加による病床の逼迫などに直面して医療崩壊を回避しようと懸命だ。だが、第3波が地域的な現象ではなく全国的な現象だとすれば、どこかの地域で押さえ込んだとしても効果は限られ、すぐに別の地域で感染拡大が始まろう。

 地域的な対策ではなく全国的な対策が必要となれば政府が動くしかなく、治療薬やワクチンが不在といえる現在、感染拡大を抑制する方法は人々の接触機会を減らすことしかない。それで、「Go to トラベル」「Go to イート」などを取りやめ、人々に外出自粛や企業にリモートワーク拡充などを求めるのだが、要請だけでは効果が限られるとすれば、強制力を行使するしかない。「Go to ロックダウン」とか「Go to 緊急事態宣言」になりかねない状況だ。

 欧州各国ではすでに「Go to ロックダウン」が現実化した。フランスは全土で外出制限を実施し、飲食店などを閉鎖した。ドイツも飲食店や娯楽施設を閉鎖し、イタリアは全土で飲食店の夜間営業を制限、人々の夜間外出を禁止した地域がある。スペインは全土で夜間外出を禁止し、英国はイングランドでロックダウンを実施した。オーストリアは飲食店の営業を禁止して夜間外出を禁止、ポルトガルは人々に在宅を要請し、ベルギーはスーパーを除く商業施設の営業を禁止した。

 第3波の感染拡大にも日本政府の動きは鈍く見える。企業決算では大幅な赤字が続出していて、厳しい外出制限で営業活動を停止させれば回復不能に陥りかねないダメージを企業に与えかねず、財政的な余裕もないので日本政府はロックダウンを躊躇する。「Go to〜」キャンペーンだけが第3波の原因ではないだろうが、「Go to ロックダウン」に追い込まれるとするなら皮肉だ。