望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

韓国で感染爆発

 韓国は2020年来、大量のPCR検査で感染者を見つけ出して隔離する対策で、人口あたりの感染者数を他国より少なくすることに成功したので「K防疫」と称して誇ってきた。だが、2月から新規感染者数の増加に歯止めがかからず、受検者が殺到してPCR検査体制が回らなくなり、医療機関の迅速抗原検査でも感染有無を判断できることにした。
 感染を抑止しないPCR検査を増やしたところで感染拡大は抑えられず、韓国は感染爆発にお手上げと見える。K防疫の「成功体験」は人々にも共有されているらしく、検査希望者が医療機関などに詰めかけ、医療機関も保健所も業務が停滞しているという。PCR検査を増やせば増やすほど感染者が見つかる状況になったなら、PCR検査を増やすことは医療体制への圧力となる(政府はPCR検査数を制限)。
 韓国の累計感染者数は3月24日に1080万人となり、1000万人を超えた。人口は約5178万人なので、21%の人々が感染した計算(=国民の5人に1人が感染した)。死者数も増えており、ソウル周辺では遺体が大量に滞留していると報じられた。葬儀場は増加する遺体の安置空間の不足で混乱が生じ、保健福祉省は葬儀場に遺体の安置空間の拡張を命じ、全国の火葬場には営業時間を延長するよう指示した。
 世界で累計感染者が最も多いのは米国で8100万人台、次いでインド4300万人台、ブラジル3000万人台、フランスと英国、ドイツが2千万人台、ロシアとトルコ、イタリア、韓国、スペインが1千万人台となる。韓国以外の国は以前から感染者が多かったが、韓国は 2022年になって一気に感染者が増え、ベスト10入りした。
 新規感染者が10万人台、20万人台から30万人台、40万人台と増え、62万人を超えた日もあった。K防疫では感染拡大に無力だと新規感染者数の数字が明確に示す状況で、韓国政府は厳しい行動制限ではなく制限緩和へと動いた。例えば、濃厚接触者の隔離措置を解除し、私的会合の人数を8人に緩和し、飲食店などのワクチンパスポート制度を取りやめ、ワクチン未接種者の会食への参加を容認し、飲食店の営業終了時間を延長した。
 これらの緩和は大統領選の投票日の前に行われ、飲食店など自営業者の歓心を狙ったなどの批判のほか、医療関係者から「政府が防疫を放棄した」とか、感染拡大を放置して「集団免疫の実験を行っている」などの厳しい声が上がっているという。さらに大統領選の前には大規模な集会が連日開かれていて、それが感染拡大を後押ししたとも見られている。
 各国ともオミクロン株の感染拡大は長く続いているから、韓国の感染爆発もしばらく続きそうだ。こうなりゃ、人口の何%が感染すると集団免疫が得られるのか、世界に先駆けて試すしかないか。集団免疫を獲得したアカツキには、かつて誇ったK防疫の代わりに「K集団免疫」を世界に向けてアピールする?(集団免疫を獲得するまでに死者数がどこまで跳ね上がるのかは誰も知らない)。