望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

夏を迎えて感染拡大

 夏を迎え日本では新型コロナウイルスの感染者が全国で急増している。7月23日には新たに20万975人が確認され、死者数も72人と増えた。感染者は22日に19万5000人、21日は18万6200人、20日は15万2000人と増加ペースが加速した。7月初めころの新規感染者数は2万人台/日だったが、15日に10万人を超えた。

 この急増の原因として、感染力が強い「BA.5」への置き換わりが進んでいることのほか、▽人々の外出が活発化(外出の自粛が減少)、▽イベントや旅行などが再開され接触機会が増加、▽ワクチン接種や感染で獲得した免疫の低下、▽冷房使用に伴い換気が不十分、▽子供や若者のワクチン接種率が低いーなどが指摘されている。

 さらに、市中には無症状の感染者が既に多く存在しているのだが、感染急増のニュースにPCR検査などを受ける人が増え、そこで陽性となって感染者とカウントされて感染急増を加速させ、それが大きく報道されてPCR検査を受ける人をさらに増やすという「探せば探すだけ感染者が見つかる」循環だと皮肉る人もいる。

 ちなみにPCR検査数は、6月28日は101,708件だった(翌29日の新規感染者数は2万3千人台)が、7月12日144,967件、7月19日224,068件、7月21日308,436件、7月22日318,534件と増えた(厚労省サイト)。7月24日は140,953件と減ったが、この日は日曜日(PCR検査は民間検査会社が過半を担っている)。日経によると、7日移動平均の感染者数と検査数で単純計算した検査陽性率は61.15%。

 世界に目を向けると、累計感染者数は5億7018万人(死者数638万人、7月25日現在)。国別の最多は米国で9041万人と突出して多く、次いでインド4390万人、フランス3362万人、ブラジル3359万人、ドイツ3033万人、英国2342万人、イタリア2066万人、韓国1924万人、ロシア1826万人、トルコ1552万人、スペイン1320万人、日本1137万人、ベトナム1076万人で、これらの諸国が1千万人以上の累計感染者数。

 日本以上に感染者が多い英国は2月に新型コロナウイルス対策の法的規制を全て撤廃し、欧州諸国も規制の緩和に動き、米国では全ての州でマスク着用義務が撤廃されるなど、パンデミック前の日常生活に復帰する政策を欧米は実行している。パンデミック終息の見込みがなく、重症化率が低いことなどから新型コロナウイルスとの共生を容認した(共生せざるを得ない現実に対応した)。

 夏のバカンスシーズンで人の移動が活発化している欧州では新規感染者が増加傾向で、過去2週間で新規感染者は約3割増加したが、各国政府には規制を再強化する考えはなく、人々も過剰な恐怖心を持たなくなったと報じられている。「人々の接触機会が増えれば新規感染者は増加する」ことは日本も世界も同じだが、欧米は新規感染者の増加にも落ち着きを失わない社会になりつつあると見える。