望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

探せば、見つかる?

 新型コロナウイルスの感染が騒がれ始めた頃、店頭からマスクが消えた。入荷があってもすぐに売り切れ、しばらくは品切れ状態が続き、マスクを求めて探し回る人々の姿が報じられた。マスク製造に参入する企業が増え、中国からの輸入も増えて流通量が増加し、店頭には目玉商品としてマスクが陳列されるようになったが、どこでも、いつでも買えるようになると人々は必要分しか買わなくなる。

 やがて、うず高く店頭に陳列されていたマスクは所定の売り場に戻った。マスクは一時期、探しても見つからない状態だったが、現在は、探せば見つかる状態になった。需要を上回る大量の供給は値下げ圧力となり、今では50枚入り698円とか30枚入り498円などの箱入り商品が目玉商品として陳列されたりしている。

 市中の店頭にマスクの存在が少なかった時には、探しても見つかる確率は小さかったが、どこでも売っている時には、探せば見つかる確率は大きい。さらに、マスクが品薄の時にも、1人で探すよりも複数で探すほうがマスクが見つかる確率は高くなる。1人よりも10人、10人よりも100人、100人よりも1000人で探したほうがマスクが見つかる確率は大きい。

 ごく少なくしか市中に存在しないものなら、大勢で探しても見つかる確率は少ないが、そこここに存在するものなら、探す人数や回数を増やすほど、次々と見つかるだろう。マスクに例えるなら、現在は様々な店舗でマスクが売られており、薬局だけを探してもマスクは見つかるし、量販店や書店など様々な店舗を探すならマスクは次々と見つかるだろう。

 日本各地で感染者が急増し、過去最高数の感染者を確認する地方が相次いでいる。第3波が襲来したとの受け止めが一般的なようで、経済振興を狙った「Go to〜」が感染拡大につながったとの批判が高まった。一方でPCR検査などが大幅に増えたことにより、見つかる感染者が増えたとの見方がある。検査対象が広がったため、無症状の感染者も多く見つかって感染者が増えたのであり、感染者数だけを検査数が少ない以前と比べても正確な比較はできないとの指摘だ。

 厚労省サイトによると、PCR検査実施人数は日によって変動幅が大きいが、3月4日の3940人以来11月25日までの累計は305万1173人。最も多かったのは9月29日の10万3676人、次いで8月14日の5万5240人。7月末から2万人を超す日が珍しくなくなり、11月25日は4万1052人と検査実施人数は大幅に増えた。7月中旬までは1万人に届かない日がほとんどだったが、それ以降は1万人を超え、2万人を超える日は増えた。

 PCR検査数が大幅に増えたのは民間検査会社の検査数が増えたためだ。5月30日には民間検査会社の実施件数は540件だったが、11月中旬には1万5千件以上と大幅に増えている。第3波が襲来したから感染者が増え、重傷者も増えているのだろうが、PCR検査数が大幅に増えたことの影響を踏まえた分析が必要だ。