望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

カウントされない感染者

 日本は感染拡大の第8波の中にあり、新規感染者数が10万人を超す日は珍しくなく、死者数も200人台/日が続いている。累計の感染者数は2669万3664人、死者数は5万2868人に達した(12月15日現在。以下同)。ウイズ・コロナ政策に転換せざるを得ないとの共通認識が広がったのか、厳しい行動制限を求める声は少なく、テレビや新聞などは感染拡大のトップニュース扱いをやめた。

 日本人の5人に1人以上が感染した計算で、死者数も多く出ているのだが、社会は平静を保っていると見える。累計感染者数が100万人を超えたのは東京372万人(累計死者数6458人)、大阪239万人(6895人)、神奈川183万人(3352人)、愛知169万人(3274人)、埼玉147万人(2743人)、福岡124万人(2153人)、兵庫118万人(3069人)、千葉117万人(2824人)、北海道116万人(3710人)。

 欧米をはじめ世界ではウイズ・コロナ政策に転換した国が多く、マスクを人々が着用しなくなった国も多い。だが世界の累計感染者数は6億5108万人、累計死者数665万人と感染が終息する気配はない(感染者の統計対象を変更した国もあるというので、国際的な統計の正確さは損なわれている)。

 累計感染者数の最多は米国で9968万人(109万人)、次いでインド4468万人(53万人)、フランス3889万人(16万人)、ドイツ3691万人(16万人)、ブラジル3575万人(69万人)、韓国2800万人(3万人)、イタリア2471万人(18万人)、英国2428万人(21万人)など。日本より累計感染者数が多い国でもウイズ・コロナ政策に転換するなど、新型コロナウイルスの根絶は見込めないと各国は判断している。

 中国は公式発表で累計感染者数189万人、累計死者数5235人としている(だが、中国での感染拡大の実態を公式発表の数字は反映していないと見られている)。中国では大規模なPCR検査を人々に強制することで無症状や軽症の感染者を見つけ出し、強制的に隔離することで感染拡大を封じ込め、欧米諸国などに比較して中国のゼロコロナ政策は成功していると誇ってきた。

 だが中国は急速に従来のゼロコロナ政策を修正し、大規模なPCR検査をやめ、人々に頻繁に陰性証明を求めることもやめた。大規模なPCR検査をやめたので無症状や軽症の感染者を見つけ出すことができなくなったので、とうとう無症状の感染者数の公表をやめたと政府は表明せざるを得なくなった。理由を「正確に実際の数を把握できないため」としたが、これから中国政府の発表する統計が実態を正確に反映するようになるのなら慶賀の至りだな。

 PCR検査をやめたので中国が発表する感染者数は減るだろうが、感染拡大の実態は不明だ。病院に発熱者が詰めかけ、薬局に抗原検査キットや風邪薬、解熱剤などを求める人々が列をなしていると報じられた。中国政府のゼロコロナ政策もウイズコロナ政策も人々が信頼していないとすれば、人々は自衛策に頼るしかない。