望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

探せば見つかる

 デルタ株より感染力が強いというオミクロン株に感染した人には無症状や軽症の人が多いという。報道によると、沖縄県では療養中の感染者675人(4日時点)のうち92.3%が無症状か軽症、東京都で感染が確認された115人(7日時点)の21%は無症状で79%が軽症、愛知県では542人(12日時点。感染疑い含む)のうち98.2%は軽症・無症状だった。

 米国で1日当たりの新規感染者が140万人を上回り、欧州諸国で同20万人、30万人を超すなどオミクロン株の強力な感染力が可視化され、日本でも各地で感染者が急増し、警戒感が高まった。無料PCR検査が全国で始まり、陰性証明を求める人や感染の不安に動かされた人などが殺到している。

 軽症の人には発熱のほかに、せき、のどの痛み、倦怠感、鼻水・鼻づまり、頭痛、関節痛などが見られるという(人によって何の症状が現れるのか異なる)。これらはパンデミックの前なら風邪の症状とされたのだが、今では新型コロナウイルス感染か?との疑いが先に立ち、無料PCR検査場へ群がる。

 これらの症状が現れても寝込むほどでなければ以前なら、市販の風邪薬を服用して自分で治す人が多かっただろう。だが、オミクロン株の感染拡大が大きく報じられるようになり、人々は風邪ではなくオミクロン株の感染を疑う。疑いは不安を増幅し、無料PCR検査などで陰性とされるまで安心できない。

 風邪気味の人や感染拡大の報道に不安を覚えた人々が無料PCR検査場に詰めかけ、大量の検査が行われるようになると、無症状や軽症だが新型コロナウイルスに感染している人が次々に発見されるだろう。感染者が日々増えているとの報道が連日続き、風邪気味や不安を感じた多くの人が更にPCR検査場に押しかけ、更に感染者が発見されて、感染拡大が大きく報じられるという循環になる。

 オミクロン株の感染力が強く、無症状や軽症の人が多いとすると、大量の無料PCR検査が全国各地で行われたなら相当数の感染者(陽性)が発見されるのは当然だ。つまり、探せば見つかる。探せば探すほど多く見つかる。こうなると、感染者数が増えることに大騒ぎすることには意味はなく、医療の逼迫状況などを注視すべき状況に移行したと認識を変えたほうがいい。

 オミクロン株による重症者や死者が少ないことから新型コロナウイルス感染症は既存のインフルエンザと同様になりつつあるとの予想が英国などでは現れ、新型コロナウイルスとの共存へ前進したと受け止める人もいるようだ。感染力が強いオミクロン株による感染拡大が続くと集団免疫の獲得が近づくのかは不明だが。