望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ウイルスとの共存へ

 世界の新型コロナ感染者数は2月9日に累計で4億人を超えた。3億人を超えたのが1月7日だったので、ほぼ1カ月間で1億人の新規感染者が発生した(2億人を超えたのは21年8月6日なので3億人まで1億人増えるのにほぼ5カ月、1億人を超えたのは21年1月27日なので2億人まで1億人増えるのにほぼ6カ月半かかった)。

 オミクロン株の強力な感染力で、感染拡大がスピードアップしている。感染拡大の終息の見通しはつかず、新型コロナウイルスの根絶は期待薄か。こうまで大幅に感染者の増加が続くと、世界においてゼロコロナ戦略は不可能だろうから、ウイルスとの共存体制に転換するのが合理的な判断ともなる。

 スウェーデンは、新規感染者が発生しているが重症者は少なく、ほぼ全ての規制を9日から撤廃した。無料の検査もやめ、「パンデミックは終わったといえるだろう」と保健相。警戒は続けるものの、社会の脅威とはもう見なさず、新型コロナウイルスと共生する路線に転換した。「スウェーデンの社会を再び動かすときだ」と首相。

 デンマークは2月から、ワクチンの接種証明の提示などほぼ全ての規制を撤廃した。「2月から新型コロナが社会にとって危険な病気と分類しない」と保健相。「規制にさようならを言い、コロナ前の生活にこんにちはと言える」と首相。ノルウェーも2月から規制をほぼ撤廃した。フィンランドも14日から段階的に撤廃した。

 新規感染者は増えたが入院する人が減ったオランダは、店舗の営業制限などの規制を段階的に緩和した(感染対策をとることが条件)。イタリアとフランス、スペインは屋外でのマスクの着用義務を解除し、米国ではニューヨーク州など屋内でのマスク着用義務を撤廃する州が増えた。

 英国は1月から規制緩和に動き、イングランドではほぼ規制がなくなり、ウェールズスコットランド北アイルランドでも規制緩和が進む。11日からは水際対策をほぼ撤廃し、2回のワクチン接種者には入国時の検査を不要とし、隔離も必要なくなった。国内で感染が広がれば水際対策は「もはや意味がない」と運輸相。重症化率が高くなければインフルエンザなどと同じように扱うのが英国の立場だと報じられた。

 まだ新規感染者数が多い各国での規制緩和により感染者はさらに増え、水際対策の撤廃で国境を越えてウイルスの拡散は進む。これらの国の規制撤廃は隣接する諸国の厳しい規制の効果を薄めるので、各国も規制緩和を余儀なくさせられよう。

 規制緩和でウイルスとの共存に転換した各国の政策により世界で感染者は今後も増え、世界的にウイルスとの共存に向かわざるを得なくなるだろう。医療体制が脆弱な国や、厳しい規制でゼロコロナ政策を続ける国は「鎖国」をするしかない。