望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

新型から季節性へ

 インフルエンザとは「インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症で、一般のかぜ症候群とは分けて考えるべき重くなりやすい疾患」で「人類に残されている最大級の疫病」である(国立感染症研究所。以下同)。

 インフルエンザウイルスは「A、B、Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型」で、「A型では、HAには15種類、NAには9種類の抗原性の異なる亜型が存在し、これらの様々な組み合わせを持つウイルスが、ヒト以外にもブタやトリなどその他の宿主に広く分布」し、A型インフルエンザは「数年から数十年ごとに世界的な大流行が見られるが、これは突然別の亜型のウイルスが出現して、従来の亜型ウイルスにとって代わることによって起こる」。

 感染して「1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状が続き、約1週間の経過で軽快するのが典型的」な症状で、「呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者では、原疾患の増悪とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こし」やすくなり、「入院や死亡の危険が増加」する。

 インフルエンザの発生状況(2018/2019 シーズン)は、全国で医療機関を受診したインフルエンザの累計患者数は約1200万人で入院患者数は2万人強、死者(超過死亡)は約3400人で例年と同程度とされる。超過死亡とは「直接的、間接的を問わず、インフルエンザ流行がなければ回避できたであろう死亡者数」。

 新型インフルエンザが現れると世界的に流行することがある。過去には1918〜1919年のスペインインフルエンザ、1957〜1958年のアジアインフルエンザ、1968〜1969年の香港インフルエンザ、2009〜2010年の新型インフルエンザA(H1N1)などがある(厚労省サイトから)。

 スペインインフルエンザでは死亡者が日本で約40万人と推定されている(全世界で2千万人とも4千万人ともいわれる)。2009年に新型インフルエンザAが世界的に大流行し、日本では約2千万人が罹患したと推計され、入院患者数は約1.8万人、死亡者は203人だった(翌年以降も流行を繰り返し、季節性インフルエンザとして扱われるようになった)。

 新型コロナウイルスの感染がピークを過ぎたとは新規の感染者数の減少が続くことで判断できるだろうが、感染が終息したと判断するのは簡単ではない。感染者の発生がセロとなる状態が続いても、ウイルスが世界から完全に除去されることはあり得ないだろうから、感染の再発は想定される。

 新型コロナウイルスが消滅することはなく、今後、季節的な流行を繰り返すようになれば、人類は新型コロナウイルスと共存して行かざるを得なくなる。免疫を獲得する人々も増えるだろうから、いずれ新型コロナウイルスも季節性インフルエンザとして扱われるようになるかもしれない。