望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

集団免疫が近い?

 集団免疫とは「人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなる状態」(厚労省サイト)。ただ、感染症の種類によって、集団免疫を得るために必要な免疫を持つ人の割合は異なり、新型コロナウイルスのワクチンに「集団免疫の効果があるかどうかは分かっておらず、分かるまでには時間を要する」(同)。

 ワクチン接種が各国で進んでいるが、ワクチン接種者の感染事例も各国で報告され、ワクチン接種が増えたとしても、感染症が流行しなくなる集団免疫の獲得は困難との見方が有力だ。ワクチン接種が進んだことで重症者や死者の割合が低下しているとデータは示しているのでワクチンの効果はあるのだろうが、オミクロン株によるとされる感染爆発が世界で顕著になった。

 新型コロナウイルスに感染することによって得ることができる抗体を持つ人が増えた時に集団免疫が得られると仮定するなら、オミクロン株による世界での感染爆発は集団免疫の獲得に向けての大いなる前進かもしれない。だが、新型コロナウイルスにおいて集団免疫が、そもそも存在するのか不明だ。

 たった1日の新規感染者が米国では100万人以上も確認され、フランスでは33万人以上、英国で20万人以上、イタリアで約19万人、スペインで7万人以上などと感染爆発が報じられ、インドで9万人以上、アルゼンチンで8万人以上、オーストラリアでも5万人近くの感染者が1日あたりで確認されるなど感染爆発は世界中で起きている。

 世界の累計感染者数は1月7日に3億人を超えた。最多は米国で約5840万人、次いでインドが約3510万人、ブラジルが約2230万人、英国が約1410万人、フランスが約1129万人、ロシアが約1040万人、トルコが約978万人などと続く(日本は174万人だが、感染爆発の気配が漂う)。

 デルタ株の感染が持続しているところへ、感染力が強いというオミクロン株の拡散が加わって今回の感染爆発が起きていると見える。感染者が増えることで集団免疫を得ることができると期待したいが、さて、人口の何%が感染すれば集団免疫が得られるのかは不明だ。もし、人口の7割、8割の人が感染する必要があるなら集団免疫の獲得は遥かに遠い将来の話になる。

 もし人口の5割が感染すれば集団免疫を獲得できるとしても、米国の人口は約3.3億人なので1.6億人以上の感染者が必要だ。英国は約6800万人なので必要な感染者は3400万人、フランスは約6500万人なので感染者が3300万人ほどに達すれば集団免疫が獲得できる計算だ。これらはワクチンによる免疫獲得を考慮しない試算だが、集団免疫の獲得がまだ先の話であることは確かそうだ。