望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

縮小もいい?

 え~、寒うなってきましたな。日本各地から雪の便りが届き、北風は冷たく、懐も寒くってヤツでして。冬の寒さはこりゃ仕方がない、春になれば暖かくなりますな。懐のほうは厄介でして、簡単には温かくなりそうにありませんや。それどころか、実体経済は世界でも日本でも、もっと悪化するって言う人もいましてね、庶民の懐はもっともっと寒くなるなんて脅かすンですよ。



 どうすりゃ懐が温かくなりますかって聞いたンですよ。そしたらね、その人は景気が良くならなけりゃ無理だって言いやがるンで。だからね、どうすりゃ景気が良くなるンですかって聞くと、分からんって言いやがって、社会の金回りが良くなることが必要だって言うもンですから、景気が良くならないと金回りは良くならないんじゃないですかって聞くとね、そうとも言えるなんて言いやがンで。



 まあ言ってみれば、何が景気浮揚に有効なのか見えなくなってるンでしょうな。政府の経済対策も市販の風邪薬程度には効くのか効果のほどは知りませんがね、多少の金(ン兆円)をばらまいてみたって、砂利道に水を撒く程度のものかも。金は天下の回りもの……なるほど、庶民の懐は、金が溜まるよりも、入ったらすぐ出て行くようになっているらしいや。



 先の見通しがつかないンですから、どこの国の人だって消費を控えるでしょう。懐にまだ余裕があったって、人々が警戒するのは当然。そんな人々の消費を活発化させる経済対策とは、減税? 公共事業? 温暖化・省エネ対策? それとも戦争?



 需要が縮小すると、供給過剰になります。だから供給も縮小して経済をダウンサイジングさせる……実際には雇用調整が進められるだけだったりしてね。働かなきゃ食っていけない人々の収入が減り、生活を切り詰めざるを得ない……なるほど経済は縮小しますな。これを「悪い」経済縮小とすると、「良い」経済縮小ってのもあるンじゃないですかね。経済的な乱世にある現在、成長を目指さない経済への転換ってのはアリかも。「成長」から「持続」への転換ですな。



 例えば、年収300万円の人が家庭を持ち、マイホームを持ち、子どもを育てていけるようにするンですな。そのためにはね、基礎的な食料品を安価に流通させ、最低7、80年はもつ住宅を親子ローンで3千万円以内で販売させるよう助成し、公的な教育・医療制度を整備するなど、生活の基礎的部分を低コストで提供する社会に変えていくってのはどうですかね。日本の世帯平均年収は500万円台だそうですが、300万円台の人たちを基準に社会を組み直すンです。



 携帯も通話とメールだけにして使用料を引き下げるなど企業も、やたらと高機能な商品から、ベーシックで丈夫な商品を拡充し、広告費を抑え、モデルチェンジを控えて長く売るように転換しなきゃいけませんな。ケチる社会にするンじゃなくて、使い捨ての消費から合理的な消費へ変えていくんです。もちろん、お金持ちはハイレベルのサービス・商品を買えばいいんですよ。