望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ワクチンで大儲け

 新型コロナウイルスのワクチンの世界における累計接種回数は約107億回(2月27日)という。最も多いのは中国で31.1億回、次いでインド17.7億回、米国5.4億回となり、この3国で世界全体の半数を上回る。日本は2.2億回で累計接種回数ではブラジル3.9億回、インドネシア3.4億回に続いて世界で6番目に多い(人口が多い国で接種回数は多くなる)。

 中国では2種類の国産ワクチンなどが使用され、インドでは英企業の技術提供を受けて開発されたワクチンなどが使われ、米国ではファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどが使われている。今回の世界的パンデミックは巨大なワクチン接種市場を新たに創出し、各社に巨利をもたらした。

 2021年に最も売れた薬になったと報じられたファイザー社の新型コロナウイルスワクチン。その売上高は368億ドル(約4.2兆円)で、同社の21年の売上高は前年比95%増の812億ドルと倍増した。利益は2.4倍の219億ドルと巨額だ。感染拡大が続いているので、新型コロナウイルス関連の医薬品の売上高は22年に540億ドル(約6.2兆円)を見込んでいるそうだ。

 モデルナも好調で、21年12月期決算は売上高が前期比23倍の184億ドルと大幅な増加となった。うち96%がワクチン売上高という。このワクチンのおかげでモデルナは上場以来初めて通期で黒字化したというから、パンデミック特需の恩恵がくっきり現れた。22年は7%増の190億ドルを見込む。

 欧州諸国などでは厳しい規制を次々に撤廃し、パンデミック以前の日常に復帰する動きが相次いでいるが、それはワクチン接種で重症化を抑制できるとの判断に支えられている。つまり、厳しい規制の撤廃が世界的に広がったとしても、ワクチン需要は減らず、むしろ定期的な接種などでワクチン需要が拡大する可能性もあり、各社の売上高は少なくても22年は順調に拡大しそうだ。

 このワクチン特需の特徴は、第一に買い手が各国政府であるから代金回収の不安が皆無であることだ。第二に各国が争奪戦を始めたので値崩れがなかっただろうこと、第三に感染を防ぐ効果が限定的なので穏やかな感染拡大が続き、ワクチン需要も持続することだ。各社が各国に同一価格で販売しているのか詳らかではないが、値切る国には「嫌なら、よそへ売るよ」と強気の商売をしているだろうな。

 このパンデミックで各国政府は人々の生活を支え、経済を支えるために巨額の財政支出をしたが、ワクチン確保のためにも巨額の財政支出をしただろう。それが各社の大幅な売上や利益の増加となって現れた。各社は十分な利益を得たのだが、世界にはワクチン接種が進まず、1回のワクチン接種者が人口の10%以下の国が多数存在する。健康も生命も金次第という状況が現在も世界で続いていることをコロナワクチンは示している。