望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

赤字決算のオンパレード

 新型コロナウイルスの感染拡大は市場経済をマヒさせた。外出自粛や移動制限などが鉄道会社や航空会社を直撃し、惨憺たる決算発表が相次いでいる。人々による移動の需要が制限されて大幅に減少したのだから、各社の売り上げは大幅に落ち込み、利益が出るはずもなく、赤字決算のオンパレードとなった。

 JR東日本の2020年4〜9月期の中間決算は最終損益が2643億円の赤字。新型コロナウイルスの影響で鉄道の利用客が大幅に減り、駅ビルなどでの売り上げも減ったため、売り上げは前年同期比48%減と半減した。21年3月期の最終損益は4180億円の赤字になる見通し(前期は1984億円の黒字だった)。中間期、通期とも最終赤字になるのは初めて。

 JR東海の21年3月期の連結最終損益は1920億円の赤字になる見通し(前期は3978億円の黒字)で、最終赤字は民営化後初めて。売上高は8630億円の53%減と売り上げが半減するのだから利益が出るはずもない。新幹線で稼ぐ同社だが、ビジネス客や観光客などの利用が“蒸発”した。需要は戻ってきているものの、来年3月にかけて4割減に回復すると見込んでいるペースだ。

 利用客が蒸発したのは航空会社も同じ。ANAの2021年3月期の連結最終損益は5100億円の赤字になる見通し(前期は276億円の黒字)で赤字額は過去最大。売上高は63%減の7400億円と見込むが、こんな売上高では固定コストも賄えず、資金が流出し続けるだけだ。20年4~9月期は売上高2918億円で72%減、営業損益は2809億円の赤字、純損益は1884億円の赤字だった。

 JALも大幅な赤字だ。2021年3月期の連結最終損益は2400億〜2700億円で過去最大の赤字(前期は534億円の黒字)になる見通し。売上高は5300億~6000億円で60%前後の減少とする。国際線、国内線ともに一時は旅客機がほとんど飛ばなかったのだから航空会社がやっていけるはずがない。20年4〜9月期の中間決算は、売上高1947億円で74%減、純損益は1612億円の赤字。なお4~9月の旅客数は国際線で97%減とほぼ全滅。国内線は回復傾向にあるが、それでも76%減。

 国内外で感染拡大の終息の見通しがつかず航空需要の先行きは不透明だ。ANAは人件費などのコスト削減を急ぐ。冬のボーナスをゼロにするなど給与減額を図るとともに、多数の社員をグループ外の企業に出向させたり、希望退職を募集したり、保有する機体数を大型機などで35機減らしたりと事業構造改革を進め、21年度に2500億円のコスト削減を目指すという縮小均衡策に頼る。

 どんな大企業でも需要がなくなれば途端に経営危機に陥る。新型コロナウイルスは世界規模で様々な需要を“蒸発”させたのだから、世界で実体経済は大ダメージを受けた。各国の航空会社は政府の支援に頼って生き延びようとしているが、感染再発が続くなら前途は閉ざされている。緩やかに回復する国内需要にすがって生き延びる道を見いだすことができるか、日本の鉄道会社や航空会社の正念場だ。