中国の新型コロナウイルスの感染者数、死者数はともに国際的には少ないほうで、中国は強権で人々の行動を厳しく制約してCOVID-19の感染拡大を封じ込んだとされ、欧米やインド、ブラジルなどに比べ中国は感染対策に成功したと見られている。だが、中国が感染拡大を封じ込んだ後に世界ではデルタ株による感染が拡大した。
感染力が強いとされるデルタ株が世界で感染拡大する前に中国は国内での感染拡大を抑え込み、外国からの人々の入国を厳しく制限した。その後も感染者は国内で出ているのだが、そのつど感染者が出た地域を封鎖するなど厳しい行動制限で感染拡大を封じているという。共産党が独裁統治する強権国家である中国流の対策だ。
しかし、デルタ株が世界に蔓延し、各国で膨大な感染者を生じさせた。厳しい入国制限などによってデルタ株がほとんど中国に入っていないとすると、中国はデルタ株に対して脆弱性を持つ。デルタ株の流行を経験した各国はワクチン接種増加とともに規制を緩め、パンデミック前の社会への復帰を模索し始めたが、中国はデルタ株に対する強い警戒を緩めることができない。
中国がデルタ株の国外からの流入にいつまでも警戒し続けなければならないとすると、外国人の入国を制限し、中国人の外国旅行も限定、観光旅行は許可されないだろう。厳しい入国制限と国外旅行の制限が続くとなると中国はほぼ「鎖国」となる。大量の中国人観光客の購買力に期待する各国は当てが外れる。
デルタ株に対して中国製ワクチンの効果が高ければ中国は段階的に「鎖国」を緩めることができようが、そうしたニュースは伝わってこない。 世界に蔓延したデルタ株を中国の強権でもどうすることもできず、デルタ株が入ってくれば日本の第5波をはるかに上回る感染者数になるだろうから中国は「鎖国」を続けるしかない。
感染を抑え込んでCOVID-19対策で世界のトップを走っていたつもりが、デルタ株によっって1周遅れのトップになった中国。感染抑止に成功したという共産党政府の輝かしい実績は否定されてはならないとするなら、デルタ株の流入もCOVID-19との共存への転換も許されまい。共産党政府の輝かしい実績を守ることが、政策の幅を狭め、強権で押し進むしかなくさせている。
新型コロナウイルスに対して集団免疫が可能なのか不明だが、英国をはじめ各国はワクチン接種者の増加とともに規制を緩めた。爆発的な感染拡大が見られなければ各国は国際的な移動の規制も緩めるだろう。だが中国はデルタ株に脆弱のままでは、「鎖国」を続けざるを得ない。