望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

感染爆発に無力

 日本の累計感染者数は104万749人、累計死者数は1万5290人となった(8月9日現在。以下同)。7月29日に新規感染者が1万人/日を超えてから、ほぼ毎日、1万人/日超えが続いている。このペースが続くと1カ月で30万人以上増え、3カ月で90万人以上、半年では180万人以上増える計算になる。この感染爆発に医療体制は対応できず、各地で大量の自宅待機(療養)者が出るだろう。

 東京25万2169人、神奈川9万8921人、埼玉6万7299人、千葉5万7398人の1都3県で47万人を超え、全国の45.5%とほぼ半分を占める。ここに大阪12万3519人、愛知5万6947人を加えると65万人を超え、同62.8%と全国の3分の2になる。さらに兵庫4万7501人、北海道4万7075人、福岡4万5048人、沖縄2万9080人を加えると82万人を超え、同79.0%(これら都道府県が累計感染者数の上位10)。

 人口密度が高く、職場や学校、商業施設、娯楽施設、歓楽街など密になる状況が多い都市部で感染爆発が起きていると見えるが、過疎地とされる地方でも徐々に感染が増え、累計感染者数は島根810人を除いて全県で1千人を超えた(1万人以上は前記10都道府県と京都、茨城、広島、静岡、宮城、岐阜)。感染者数が多い都市部からの移動増加が全国的な感染増加を招いたと類推できる。

 状況が変わったなら、それに対応した新しい対策が必要だ。だが、COVID-19についてはまだ確実な情報が少ないためか、今回の感染爆発に政府は新しい対策を打ち出すことはできす、感染爆発に無力だとも見える。政府は従来の対策を繰り返し、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の適用地域を拡大しただけだ(緊急事態宣言とまん延防止等重措置に効果があったならば、感染爆発は抑え込めていただろう)。

 自粛要請にも関わらず都市部で人々の外出が増え、特に酒を提供する飲食店での会食が感染拡大の主要因だと政府や都道府県は規制を強めてきたが、感染は拡大を続ける。酒を伴う飲食店でクラスターが発生することは政治家や厚労省職員などの宴会の実例で明らかだが、酒や飲食店を狙い撃ちにするだけでは感染拡大を防ぐことができないと今回の感染爆発は示している。

 従来の対策だけでは効果が見えないことで政府関係からは、人々の気の緩みに責任転嫁したり、もっと厳しい行動制限へ向けての法整備を主張する声も聞こえてくる。だが、人々に対する厳しい行動制限を可能にする権限を無能な政府が手にしたなら、人々の行動を無闇に制限するだけで、効果は上がらず、感染拡大は続くとの予測もできる。

 今回の感染拡大は、政府の権限に問題があるのではなく政府の機能に問題があると認めるなら、政府の動き方は変わらざるを得まい。だが政府にはデルタ株という感染拡大の責任を転嫁できる対象がある。デルタ株に対する新しい対策を政府は提示できていないが、感染爆発はデルタ株によると政府は主張し、それをマスメディアは検証しない。こんな状況が続くなら、感染爆発は続く。