望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





アバタ

 3D映画が話題になった2010年に、こんなコラムを書いていました。


 評判は私の耳にも届いてました。「空間表現がすばらしい」とか「槍などがスクリーンから飛び出てきて観客を驚かせるタイプの映画じゃなくて、奥行きを表現している」とか「立体感ある映像は楽しめる」とか。



 3D? この正月には見応えのある映画はあまりないので、試しに観ておくかと映画館に行ってきました。混んでましたねえ。ほぼ満席。世界的なヒットになっているといいますから、人間の好奇心を刺激したんですかね。



 ストーリーについて誉める言葉は聞きませんでしたので、3時間近くも座ったままで映像表現への関心だけでは退屈するんじゃないかとの懸念もあったんです。正直に言うと、長過ぎますね。でも、映像表現が面白いので、あまり退屈はしません。細部も丁寧に描き込まれています。



 ストーリー? 中高校生向けのSFです。22世紀の地球から遠く離れた惑星が舞台。高価な鉱物資源を狙って乱開発を軍事力で進めようという人間に、自然と調和して生きる惑星の住人が反対する……どこかで観たような話をあれこれ、つなぎ合わせただけとも言えます。まあ、3D映画で込み入った話をされても、観ているほうは面倒なだけという気もしますので、この程度が「正解」かもしれません。



 ところで、高価な鉱物資源とは、手のひらに乗るぐらいの塊が2千万ドル以上するという設定でしたが、さて、22世紀にドルがどれほどの価値を持ち続けているのか。ストーリーを作った人たちは現在のドルを念頭に設定したのでしょうが、ドル暴落の懸念が消えない中で、22世紀、いや21世紀をドルは基軸通貨として生き延びることができるのか。興味深いところです。

 話を戻して、3D映画。専用のメガネをかけないでスクリーンを見ると、版ズレで色がずれた印刷物のように見えます。専用のメガネをかけると、遠近感が出てきて、高所の木の枝をわたるシーンや空を飛ぶシーンはハラハラさせますし、屋内のシーンでも例えば、広い会議室などは奥行きがあって、空間であることが伝わってきます。



 でも、専用のメガネは改善の余地がけっこうありそうです。1)専用の3Dメガネのレンズ(と呼ぶのか?)の上下幅が短く、少しズレるとフレームが目につく、2)メガネをかけている人が専用メガネをつけた場合、安定が悪い、3)時間が経つにつれて専用メガネが緩むのか、ずれやすくなる。



 物珍しさが薄れた後は、3Dといえどもコンテンツ勝負になります。スポーツ映画は迫力がありそうです。旧作の映画でも3D化できるそうですから、期待したいですね。まず3Dの「七人の侍」「仁義なき戦い」「神々の深き欲望」「剣岳」「怪談」「太陽の墓場」などを観てみたい。