望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

感染拡大の波状攻撃

 フランスはパリなどで続けていた外出制限や店舗休業を全土に拡大し、学校を遠隔授業に切り替えた。850万人以上(国民の1割強)がワクチンを接種したが、感染力が強い英国型変異ウイルスによる感染加速で新規感染者数が6万人(3月31日)にもなる状況では、人々の接触を制限するしか策はない。ドイツでも変異ウイルスによる感染拡大が続いているが、規制強化を打ち出したものの人々の反発が強く政府は撤回に追い込まれた。

 米国でも新規感染者が6万人/日になるなど感染拡大が続き、CDC所長は欧州諸国で感染者や死者が再び急増している事態がアメリカでも起きないか心配だと警戒感を示した。ブラジルでも感染拡大が顕著で、死者数は昨年の2倍のペースで増加しているという。世界最大規模のワクチン生産国インドでも新規感染者が増え、国内接種のワクチン確保を優先するため輸出の制限を始めた。

 世界では感染者数は1億2830万人、死者数279万人(3月31日現在、以下同)。米国は感染者3039万人・死者55万人、ブラジルは1266万人・32万人、インドは1215万人・16万人。感染者数が1千万人を上回るのはこの3国だけ。フランスとロシア、英国は感染者数が400万人台、イタリアとトルコ、スペインが300万人台で、ドイツとコロンビア、アルゼンチン、ポーランド、メキシコが200万人台。

 感染拡大は日本でも目立つ。大阪や兵庫、宮城、山形、青森などで新規感染者の増加が続き、東京などでも減少傾向から反転し始めた。全国の感染者数は47万5335人で、死者数は9176人。東京で感染者数が12万人を超え、次いで大阪5.2万人、神奈川4.8万人、埼玉3.2万人、千葉2.9万人、愛知2.7万人。北海道と兵庫が2万人台で福岡が1.9万人。1千人未満は11県で、鳥取と島根、秋田は200人台で推移している。

 日本でも世界でも感染拡大が起きている地域・国と抑制されている地域・国に分かれる。感染拡大の理由として①人々の接触機会が多い、②人々の移動が多い、③変異ウイルスの存在ーなどの違いが想定される。外出制限やロックダウンなどが長引くと人々は我慢できなくなって反発したり、制限が日常化したことによる気の緩みなどからコロナ以前の行動形態に戻ることなどが影響している可能性もある。

 この感染拡大は第4波が襲来したと懸念する地域・国が多いようだ。新型コロナウイルスの感染拡大には波があり、波状攻撃とも見えるが、実際には、感染者の増加で外出制限やロックダウンなど規制を強めて人々を自宅に閉じ込めることで感染者の増加を減らし、制限を緩めると人々の接触機会が増えて感染者が増加することを繰り返しているだけだ。

 人々の接触機会が増えると感染者が増える構造が続くなら、新型コロナウイルスが自然消滅するか治療薬が誕生するまで感染拡大の波状攻撃が続くだろう。ワクチンの効果は未知数で、外出制限やロックダウンを厳しくしたり緩めたりを繰り返すしか人類には対応法がないとすると、これからも波状攻撃は繰り返される。人々が出歩いて人々と会って話し、旅行することを放棄することはないからだ。