望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





新聞やめた

 最近、首都圏から地方に引越した知人が、新聞の購読をやめたという。出版社勤務の経験もある知人は以前、新聞は情報収集の大事な手段だと言い、朝になって新聞が届いていない生活などは考えられないと言っていたのに、引っ越してからは新聞なしの生活がもう数ヶ月続いているとか。

 新聞の購読をやめることは考えていなかったと知人。首都圏にいた時は東京新聞を購読していたそうだが、引越先は東京新聞の配達エリアではなかった。知人は、地元紙にするか、朝毎読のどれかにするか決めてはいなかった。いっそ、3カ月ごとくらいに新聞を変えて、勧誘員に洗剤を持って来させてみるのもいい体験かなんて思っていたとか。

 それなのに、引越先では勧誘員が来ない。知人は地方都市の市内に引っ越し、周囲の家には地元紙などが配達されている様子だが、勧誘員が来たことはないという。それで、何となく購読を申し込む切っ掛けがなくて、そのままになっているそうだ。

 新聞が毎朝来ない生活は知人にとって初体験だという。引っ越して落ち着いた頃、新聞の購読をどうするのか家族で話し合ったが、TVの番組表は地デジでもネットでも見ることができるので家族から新聞の購読を求める声は出なかった。出版関係から離れていた知人も、最新情報を毎日収集する必要性が低下していたこともあり、そのうちに購読を再開しようと言ったものの、そのままになっているそうだ。

 新聞の購読をやめて知人の生活に小さな変化が現れた。以前は自宅のパソコンを立ち上げるのは夜、帰宅した後だったのに、最近は毎朝、パソコンを立ち上げて各新聞社のニュースサイトをチェックするようになった。新聞記事を読むより手早く目を通すことができ、あまり興味を引かない記事は見出しを読むだけでクリックしないで済ますので、時間がかからないという。

 知人は以前、時間をかけて新聞を読むことが珍しくなかった。1面から社会面まで各ページの記事のほかに解説やコラム、時には社説まで細かく目を通していたが、ネットでチェックするようになってから読む量は減っているのに物足りない感じはないとか。前は「読むそばから抜けていたのかもしれんな」と知人は笑う。

 もう一つ、知人が新聞の購読を再開しないでいるのは、つまらないネタを新聞が騒ぎ立てる一方で、新聞が伝えないニュースがあることを感じ始めたからだという。「永田町の政治家どもの騒ぎなんて、大きく扱い過ぎだ。そんな騒ぎに紙面を取られた分、伝えられていないニュースがけっこう多いんじゃないか?」と知人。もしかすると、新聞を毎日読むことにより情報操作されていたんじゃないかと知人は思い始めている。