望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

小言幸兵衛

 え~、落語に「小言幸兵衛」という噺がありましてな。麻布古川の長屋の家主、幸兵衛さん、細かいことにうるさく、長屋を回って、いつも小言を言って歩くので、ついたアダ名が小言幸兵衛。相手がいないと犬や猫、天気にまで小言を言うというんですから、離れて見てる分には笑えるんでしょうがね、近くにいて、こっちにも小言が向けられようなら迷惑というか厄介というか。



 「世に盗人の種は尽きまじ」と詠んだのは五右衛門だそうですがね、世の中から小言のタネも尽きそうにありません。だから、いつの時代にも小言をうるさく言う人はいたんでしょうが、現代の小言幸兵衛といえばマスコミですかね。あっちに向けても、こっちに向けても小言……いや批判を放ちましてね、小気味よく見えたり、頼もしく見えたりすることもあるんですが、心配もありましてね。



 マスコミは批判を放っているつもりが、相手側に聞く気がなくて、せっかくの批判も相手には小言としか届かない……なんてことがありそうな気がしましてね。そうなると、マスコミが何を言っても効果がない……と勘違いする輩や、うるさいマスコミの弱体化の好機だと、マスコミの影響力低下に利用する連中が出てきそうで。



 批判と小言の違いは、受け止める側が決めることでしょうな。批判されて真摯に反省するなんて御仁はそう、どこにでも居るわけではないでしょうから、マスコミに批判されても、「小言を食らっちゃったよ」と受け流してケリをつけたつもり。マスコミのほうも、批判はしたんだから「責任」は果たしたと、別の批判に向かったりしましてね。



 そんなマスコミが、皆がネットを使う時代となり、情報の入手経路が多様化したこともあって、批判の対象となることが増えましたな。政治家や官僚や大企業などを批判して来たマスコミだから、批判には真摯に対応するかといえば、そうとも限らない。うるさい小言が増えた……なんて思ってはいないでしょうが。