望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





方向を決めて世論調査

 新聞などのメディアが頻繁に世論調査を行うのは、時の政権批判記事を正当化するための根拠づくりの疑いが漂う。「○○内閣の支持率は○%に下がった」などと大々的に報じ、後の内閣批判記事では、さりげなく世論調査内閣支持率の数字をちりばめる。客観性のある批判ですよと念押しするように。



 内閣支持率が高いままでは、以前の小泉政権の時のようにメディアは及び腰の批判記事しか書けない。だから、内閣のキズを書き立てて、世論調査で支持率が下がるように雰囲気づくりをする……のではないかと勘ぐりたくなる。内閣批判をして、支持率が下がり、さらに内閣批判を重ねて、支持率がさらに下がる……次の首相さん、出番ですよ。



 メディアは第4の権力とされる。一方で、メディアは大衆におもねるものだとも言われ、してみると、権力というものも大衆におもねるものかもしれない。ははん、それならメディアが権力批判をするのは、他の権力と大衆を取り合ってのことか。政治不信が高まるほど、メディアは存在意義が高まる?



 共同通信が2010年3月に行った全国電世論調査で、鳩山内閣の支持率は36.3%と続落し、内閣発足以来初めて40%を割り込んだ。内閣発足時の支持率は72.0%だったそうだから、半年で半減した。

 その共同の世論調査には、「民主党小沢一郎幹事長の政治資金問題で、自民党など野党は小沢氏に対し、証人喚問など国会での説明を求めています。あなたはこれについてどう思いますか」という設問がある。電話による調査なので、回答者は、小沢氏を巡る状況を設定した設問を聞かされた後で答えるのだから、説明すべきだという答えに誘導されやすい。



 例えば「小沢一郎幹事長は記者会見で説明していますが、国会でも予算などの審議を中断して、説明すべきと思いますか」という設問なら、説明すべきとの回答は低くなったかもしれない。そもそも「小沢一郎幹事長の政治資金問題とは具体的に何か知っていますか」と聞いてみれば、正答率はどのくらいになるのか知りたいところだ。



 こういうものも当時の共同の調査にある。「あなたは夏の参院選で投票に当たって、鳩山由紀夫首相や小沢幹事長の政治資金問題を考慮しますか、それとも考慮しませんか」という設問。考慮するかと電話で聞かれた後に回答者は、考慮すると答えやすいだろう。



 メディアの世論調査には、設問の設定次第である程度、結果をリードできる。ははん、メディアが世論調査に熱心なのは、結果を利用しやすく自分らに好都合だからかと見えてくる。だからメディアは自分らに不都合な設問は設定しない。



 知りたい世論はたくさんあるのに、メディアは聞こうとしない。例えば、「一連の政治資金問題で検察は説明責任を果たしているとあなたは思いますか」「一連の政治資金を巡るメディアの報道をあなたは、客観的かつ中立的だったと思いますか」「世論調査の回答率は、その直前のマスコミ報道によって影響されるとあなたは思いますか」。