望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

1時間に100ミリ

 最近は、月に何回かは日本のどこかが豪雨に襲われているという印象だ。2013年から気象庁が運用を始めた特別警報が出ることもある。特別警報は、「大雨、地震津波、高潮などにより重大な災害の起こるおそれ」があり、警報の発表基準を「はるかに超える豪雨や大津波等が予想され、重大な災害の危険性が著しく高まっている」場合に出される。



 気象庁は「特別警報が出た場合、お住まいの地域は数十年に一度しかないような非常に危険な状況にあります。周囲の状況や市町村から発表される避難指示・避難勧告などの情報に留意し、ただちに命を守るための行動をとってください 」としているので、特別警報が発せられるとテレビのニュースなどでは「直ちに命を守る行動をとってください」と繰り返す。聞くとギョッとする言葉だ。



 各地の豪雨による土砂災害の記憶もあってか、大雨についての特別警報が多い印象だが、数十年に一度という大雨が、どの程度増えているのだろうか。気象庁によると、「最近30年間(1977~2006年)と20世紀初頭の30年間(1901~1930年)を比較すると100mm以上日数は約1.2倍、200mm以上日数は約1.4倍の出現頻度」というから大雨日数は増えているのだろう。



 また、1時間降水量50mmおよび80mm以上の短時間強雨の発生回数は「ここ30 年余りの長期的な変化傾向をみてみると、連続する10 年程度の平均は少しずつ増加」しているともいうから、夕立のような強い雨も増えているのだろう。発生数と地域分布、時間、気象条件などが分かれば傾向が見え、原因の推定もできよう。



 特別警報が出ていなくてもテレビのニュースでは、日本のどこかで「1時間に100ミリという雨が降りました」などのリポートが増えた。少し多めに雨が降ると“ニュース”にできるようになったのだから、テレビ局はニュース編成が楽になったか。でも、1時間に100ミリ程度の雨は本当に珍しいのか?という疑問もある。



 1時間に100ミリの雨が続けば、都市の配水能力を超え、被害をもたらすのだろうが、そんな強い雨でも2、30分もすれば弱まることも多い。日常では珍しくない夕立などの強い雨が、ゲリラ豪雨などと呼び名を与えられて異常気象の仲間入りをすることがあるとすれば、印象操作だ。



 各地で豪雨などによる悼ましい被害が出たこともあり、気象庁は強く警戒を呼びかけるようになり、メディアは人々に危機感を促すようになった。それは必要なことだろうが、危機感を煽って異常気象だとの周知に務めているようにも見えたりする。人々に異常気象だと思わせれば、予報が外れるのも仕方がないと受け止めてもらえる……なんて思っているわけではあるまいが。