望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

様々な外貨準備

  2015年12月末における日本の外貨準備高は1兆2332億ドルで世界2位。うち1兆1790億ドルが外貨で、その大半の1兆642億ドルが証券(ほとんどが米国債)。ちなみに金は261億ドル、IMFリザーブポジションは95億ドル、SDRは180億ドル。外貨準備高の世界1位は中国で3兆3303億ドル(15年12月末)と、日本の3倍近くにもなる。

 輸出主導で大幅な成長を続け、経済規模では日本の3倍にもなった中国だから、外貨準備高が多いのは当然にも思えるが、3兆ドル以上という額は多すぎる。内訳の公表は部分的で、米国債保有高は日本をやや下回る程度というから、中国の外貨準備の過半が外部からは窺い知れない闇の中にある。

 だから中国の外貨準備高には、世界各地での巨額の資源投資で焦げついた分が含まれているとか、多くの高官らが不正に持ち出した巨額の海外流出分が含まれているとか、いろいろな憶測が出てくる。GDP成長率を始めとして中国が発表する統計数字の信用性が揺らいでいることを考えると、外貨準備高も参考程度に評価すべきものか。

 輸出で稼ぐ国なら自国通貨安は有利になるはずだが、中国はドルを売って人民元を買い支える。様々な要因が絡んでいるのだろうが、買い支えなければ暴落する懸念があるのか……と勘ぐりたくなる。人民元の下落は、中国からの大量の資金流出と関係しているともいわれ、外貨準備のドルを売って人民元を買い支えなければならない状況かも。

 中国の外貨準備高が最も多かったのは14年6月の3兆9932億ドル。中国政府が自由に使える金を大量に持っていると見て欧州を始め世界各国が、金を引き出そうと中国になびいたのが昨今の国際情勢だが、中国政府が自由に使える金は実際には、そう多くないとなると、中国を見る世界の目は変ってこよう。

 なお、中国の外貨準備高が膨れ上がったのは、外貨集中制の名残りで、海外からの借り入れなどにより中国内に入った外貨を銀行から人民銀行が買い入れ、それも外貨準備に含めているからだという見方がある。中国に流れ込んだ膨大な外国からの投資が外貨準備高にカウントされているのだとすると、中国の外貨準備高が巨額になることは理解できるが、それは自由に使うことができない金だ。