望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

世代別の意味するもの

 覚醒剤の所持、使用、譲渡、譲り受けなどで検挙された人は全国で1万958人になる(2014年)。平均すると1日当たり30人が検挙されている計算だ。うち55%の6024人が暴力団構成員等(山口組と稲川会、住吉会の構成員等は4654人)。大麻事犯、麻薬事犯などを含めた薬物事犯の総数は1万3121人だが、その83.5%を覚醒剤事犯が占めるので、他の薬物より覚醒剤が圧倒的に多く出回っていることがうかがえる。

 検挙された人を年代別に見ると、50歳以上2486人で22.7%を占め、40代3697人は33.7%となり、40歳以上で検挙者の過半数になる。30代3301人は30.1%、20代1382人は12.6%、20歳未満92人(うち中学生2人、高校生11人)。検挙者数は20歳代以下の若年層では大幅な減少傾向で、30歳代は減少傾向、40歳代以上は増加傾向となっている。

 この年代別の数字だけを見て、中高年層での検挙者が多いことから、若者よりも中高年層で覚醒剤の乱用が増えていると、うっかり即断したマスメディアがあった。もらった資料をただ写すだけという日頃の記者活動の様子が想像できるような事例だ。

 覚醒剤事犯では再犯者が多く、再犯者7067人は検挙者1万958人の64.5%、つまり覚醒剤で検挙された人の3分の2は再犯者だ。年代別では50歳以上の検挙者の80.2%が再犯者で、40代では71.2%と非常に高い割合。30代でも57.3%、20代39.2%となり、覚醒剤に1回でも手を出してしまうと“縁”を切ることが難しく、再犯を繰り返すことがうかがえる。20歳未満でも5.4%ある。

 第3次乱用期の1997年には検挙者1万9722人と多く、うち20代8338人、30代5362人で7割を占めていた(40代2833人、20歳未満1596人、50歳以上1593人)。2014年に検挙者の過半数が40歳以上だったのは、過去の乱用期などに覚醒剤に手を出した20代、30代が、覚醒剤と手を切ることができないまま年齢を重ねていることを示している。

 元プロ野球選手やタレントらの逮捕もあって、中高年層で覚醒剤に手を出す人が増えているとのイメージが受け入れられやすいのかもしれないが、それは実態を反映していない。検挙者のうち再犯者が40代以上で7、8割になることが示すように、覚醒剤に手を出した人が多い世代が中高年になったのだ。

 なお、検挙者のうち3702人が所持事犯で、使用事犯は6178人。所持事犯と使用事犯で9880人となり、90.2%を占める。譲渡事犯は524人、譲受事犯192人、密輸入事犯176人(うち暴力団構成員等は25人、外国人135人)。なお押収された覚醒剤粉末は487.5kgだが、密輸入事犯における薬物別の押収量は448.0kg。