望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

共和国憲法(前)

 以前に別サイトで公開していた「日本共和国憲法私案」は、当該サイトの閉鎖とともに公開は終了した。だが最近、もう一度読みたいとの知人からのリクエストがあったので、当時の私案を再掲する。加えたい条項や再構築したい条項などがあるが、かつての掲載当時のままで3回に分けて再掲載する。

日本共和国憲法(試案)ーーーーーーーーーーーーーーーーー  

〔改正の骨子〕  ■衆参の機能を分け、衆議院は内政を担当し、参議院は外交、防衛を担当する。  ■衆議院から首相(内政担当)を選出し、参議院から大統領(外交・防衛担当)を選出する。  ■議員の通算任期に制限を設ける。  ■解散権をなくし、代わりに国民投票を導入する。  ■赤字予算を続けることに制限を設ける。  ■裁判制度を分野別の二審制にする。その上に最高裁判所を設置する。  ■道州制を導入する。  ■現実に存在する軍事力(自衛隊)に関して、憲法で規定する。  ■国防軍と地域防衛軍を設ける。  ■天皇制を政治から切り離す。象徴天皇制は維持する。  ■国による全機関に情報公開を義務づける。  ■日本国憲法は日本人の間に定着していると考え、継承すべきものは継承する。

〔日本共和国憲法〕ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(目次) 第一章 日本人の権利および義務 (第一条〜第三十三条) 第二章 立法 (第三十四条〜第五十八条) 第三章 行政 (第五十九条〜第七十一条) 第四章 司法 (第七十二条〜第七十九条) 第五章 財政 (第八十条〜第八十八条) 第六章 地方自治 (第八十九条〜第九十七条) 第七章 自衛権 (第九十八条〜第百七条) 第八章 天皇制 (第百八条〜第百十四条) 第九章 最高法規 (第百十五条〜第百十七条) 第十章 改正 (第百十八条) 第十一章 補則 ()

〔日本共和国憲法〕  われら日本人は日本国の主権を有し、思想・表現・信仰などの自由を有し、個人の尊厳と社会的な統合・安定を尊重しつつ、社会的・経済的・政治的正義の実現を目指す。 われらの日本国は、独立した不可分の、非宗教的かつ民主的な共和国である。日本国の政治は日本人により、日本人のために行われる。日本国の政治は、日本人の厳粛な信託によるものであり、その権威は日本人に由来し、その権力は日本人の代表者が行使し、その福利は日本人が享受する。 われら日本人は、1945年に終戦した戦争について、近隣諸国に多大な被害を与えたことを真摯に反省するとともに、そうした戦争を遂行した政治体制および軍事体制を否定する。そうした政治体制および軍事体制とは隔絶した民主的な日本国を形成し、維持していくことを決意する。 われら日本人は、自由を愛する諸国民とともに、平和で公正で安定した世界の実現のために努力する。われら日本人は、征服・支配を目的とするいかなる戦争も行わず、諸国民の自由に対しても、日本国の武力を行使しない。
第一章 日本人の権利および義務
〔日本国の主権者〕

第一条 われら日本人は、日本国の主権を有し、日本国を統治する。
〔日本人たる要件〕
第二条 日本国で生まれた人は日本国籍を有する。日本国以外で日本人の両親から生まれた子供は日本国籍を有する。日本国在住の外国籍の両親から生まれた子供は、その子供が十八歳になった時に日本国籍を選択することができる。二重国籍は認めない。

基本的人権の享有〕

第三条 われら日本人は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が日本人に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の日本人に与えられる。

〔自由・権利の保持と公共の福祉〕

第四条 この憲法が日本人に保障する自由及び権利は、日本人の不断の努力によって、保持しなければならない。また、日本人は自由及び権利を濫用してはならず、公共の福祉のために利用する責任を負う。

〔個人の尊重〕

第五条 われら日本人は、個人として尊重される。生命、自由および幸福追求に対する日本人の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

法の下の平等

第六条 われら日本人は、法の下に平等であって、民族、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的・経済的・社会的関係において、差別されない。 (2)貴族の制度は認めない。 (3)栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。栄典の授与は、現にこれを有し、または将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

〔日本人の公務員選定罷免権、公務員の本質、普通選挙の保障、投票の秘密〕

第七条 公務員を選定および罷免することは、日本人固有の権利である。 (2)すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。 (3)公務員の選挙については、成年者による普通選挙とする。 (4)すべて選挙における投票の秘密は、侵してはならない。選挙人は、その選択に関し、公的にも私的にも責任を問われない。

〔請願権〕

第八条 すべての日本人は、損害の救済、公務員の罷免、法律・命令または規則の制定・廃止・改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有する。すべての日本人は、かかる請願を行ったことによる、いかなる差別待遇も受けない。

〔国および公共団体の賠償責任〕

第九条 すべての日本人は、公務員の不法行為により損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国または公共団体に、その賠償を求めることができる。

〔奴隷的拘束および苦役からの自由〕

第十条 すべての日本人は、いかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。

〔思想および良心の自由〕

第十一条 思想および良心の自由は、侵してはならない。

〔信教の自由〕

第十二条 われら日本人は信教の自由を有する。いかなる宗教団体も、国から特権を受けたり、政治上の権力を行使してはならない。 (2)われら日本人は、宗教上の行為・祝典・儀式・行事に参加することを強制されない。 (3)国およびその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならず、宗教的活動に対して公金を支出してはならない。

〔集会・結社・表現の自由、通信の秘密〕

十三条 集会、結社および言論、出版その他一切の表現の自由は保障する。 (2)検閲は行ってはならない。通信の秘密は侵してはならない。

〔居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由〕

第十四条 われら日本人は、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する。 (2)われら日本人は、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。

〔学問の自由〕

第十五条 われら日本人は、学問の自由を有する。

〔情報公開〕

第十六条 われら日本人は、日本国のすべての機関で作成された、すべての書類を見る権利を有する。 (2)特別な理由により、書類の内容を秘匿しなければならないときは、その機関は、秘匿すべき理由を明示し、内閣の承認を得なければならない。

〔婚姻、個人の尊厳と両性の平等〕

第十七条 婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 (2)配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚ならびに婚姻および家族に関するその他の事項に関して、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

〔最低生活の保障、国の社会保障義務〕

第十八条 われら日本人は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 (2)日本国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障および公衆衛生の向上・増進に努めなければならない。

〔教育を受ける権利、教育義務〕

第十九条 われら日本人は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 (2)われら日本人は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる権利を有する。義務教育は無償とする。

〔勤労の権利、勤労条件の基準、児童の酷使禁止〕

第二十条 われら日本人は、勤労の権利を有する。 (2)賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める。 (3)児童は、酷使してはならない。

〔勤労者の団結権団体行動権

第二十一条 勤労者の団結する権利および団体交渉その他の団体行動をする権利は、保障する。

〔財産権の保障、財産権の内容、正当補償〕

第二十二条 財産権は侵してはならない。 (2)財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律で定める。 (3)私有財産は、正当な補償の下に、公共のために用いることができる。

〔納税の権利〕

第二十三条 われら日本人は、法律の定めるところにより、納税の権利を有する。

〔法的手続きの保障〕

第二十四条 われら日本人は、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪われたり、その他の刑罰を科せられない。

〔裁判を受ける権利〕

第二十五条 われら日本人は、裁判所において裁判を受ける権利を有し、奪われない。

〔逮捕に関する保障〕

第二十六条 われら日本人は、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ、理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

〔抑留拘禁に対する保障〕

第二十七条 われら日本人は、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留または拘禁されない。 (2)われら日本人は、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は直ちに、本人およびその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。 (3)われら日本人は、起訴されないままで長期に拘禁されたときは、日本国に、法律の定めるところによる損害賠償を請求できる。 (4)抑留または拘禁において、公務員による取り調べ状況は記録されなければならない。公開の法廷で要求があった場合は、公開しなければならない。

〔住居侵入・捜索・押収に対する保障〕

第二十八条 われら日本人は、その住居、書類および所持品について、侵入・捜索・押収を受けることのない権利は、第二十六条の場合を除いては、正当な理由に基づいて発せられ、かつ、捜索する場所および押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。 (2)捜索または押収は、権限を有する司法官憲が発する格別の令状により行う。

〔拷問および残虐な刑罰の禁止〕

第二十九条 公務員による拷問および残虐な刑罰は、絶対に禁止する。

〔刑事被告人の権利、証人審問権、弁護人依頼権〕

第三十条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。 (2)刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、また、公費で自己のために強制的手続きにより証人を求める権利を有する。 (3)刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。これを被告人が自ら依頼することができないときは、国でこれを附する。

〔不利益な供述の不強制、自白の証拠能力、自白のみによる処罰の禁止〕

第三十一条 われら日本人は、自己に不利益な供述を強要されない。 (2)強制、拷問もしくは脅迫による自白、または不当に長く抑留もしくは拘禁された後の自白は証拠とすることができない。 (3)われら日本人は、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、または刑罰を科せられない。

〔刑罰法規の不遡及、二重処罰の禁止〕

第三十二条 われら日本人は、実行の時に適法であった行為や、既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。

〔刑事補償〕

第三十三条 われら日本人は、抑留または拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、その保障を日本国に求めることができる。


第二章 立法
〔国会の地位、立法権
第三十四条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
両院制
第三十五条 国会は衆議院および参議院の両議院で構成する。
〔両議院の組織〕
第三十六条 両議院は、すべての日本人を代表する選挙された議員で組織する。
(2)両議院の議員の定数は、法律で定める。
〔両議院の機能〕
第三十七条 衆議院は内政に関する事項を審議し、参議院は外交・防衛に関する事項を審議する。
〔議員および選挙人の資格〕
第三十八条 両議院の議員とその選挙人の資格は法律で定める。ただし、民族、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産、収入によって差別してはならない。
(2)この憲法で保障する日本人の自由と権利を否定する日本人は、両議会の議員になることはできない。
衆議院議員参議院議員の任期〕
第三十九条 衆議院議員の任期は二年とし、通算九期まで務めることができる。参議院議員の任期は六年とし、三年ごとに半数を改選する。参議院議員は通算三期まで務めることができる。
〔両議院の議員の任期制限〕
第四十条 衆議院議員および参議院議員で通算二十年を超えて国会議員の地位にあるものは、両議会議員としての被選挙権を失う。
〔選挙に関する事項の法定〕
第四十一条 衆議院議員は、地方割りにした選挙区から選出される。参議院議員は、全国一区の選挙区から政党別の比例代表制により選出される。 (2)衆議院議員を選出する選挙において、当選した立候補者よりも多い票を得た立候補者を落選させてはならない。
(3)選挙区、投票の方法、その他両議院の議員に関する事項は、法律で定める。
〔両議院議員兼職の禁止〕
第四十二条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。
〔議員の歳費〕
第四十三条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
〔議員の不逮捕特権
第四十四条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
〔議員の発言・表決の無責任〕
第四十五条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論、表決について、院外で責任を問われない。
〔常会〕
第四十六条 衆議院の常会は、毎年一回召集する。参議院の常会は常に開催する。
〔臨時会〕
第四十七条 内閣は、衆議院の臨時会の招集を決定することができる。衆議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
国民投票
第四十八条 両議院は、国民投票が行われたとき、そこで示された結果を、尊重しなければならない。
〔議員の資格争訟〕
第四十九条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。ただし、議員の議席を失わせるには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
〔定足数、表決〕
第五十条 両議院は、各々その総議員の三分の二以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
(2)両議院の議事は、この憲法に特別の定めのある場合を除いては、出席議員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
〔会議の公開、会議録、表決の会議録記載〕
第五十一条 両議院の会議は公開とする。ただし、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
(2)両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ、一般に頒布しなければならない。
(3)出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の評決は会議録に記載しなければならない。
〔役員の選任、議院規則、懲罰〕
第五十二条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
(2)両議院は、各々その会議その他の手続き、内部の規律に関する規則を定め、また、院内の秩序を乱した議員を懲罰することができる。ただし、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。
〔法律案の議決、衆議院の優越〕
第五十三条 内政に関する法律案は、衆議院で可決したとき法律となる。外交・防衛に関する法律案は、参議院で可決したとき法律となる。
(2)内政および外交・防衛に関係する法律案は衆議院および参議院で審議する。衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。 (3)前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない。 (4)参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、六十日以内に議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる。

〔予算〕

第五十四条 毎会計年度の予算案の内政に関する予算案は、衆議院で可決したときに成立する。毎会計年度の予算案の外交・防衛に関する予算案は、参議院で可決したときに成立する。
(2)毎会計年度の内政および外交・防衛に関連する予算案は、先に衆議院に提出し、その議決の後、参議院で審議する。参議院衆議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、または参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、三十日以内に議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。
〔条約の国会承認〕
第五十五条 条約の締結は、参議院の議決をもって国会の承認とする。
(2)条約の締結に際して、衆議院が審議参加の議決を行ったときは、先に参議院で可決した後、衆議院での承認を求める。衆議院参議院と異なった議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、または衆議院が、参議院の承認した条約を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に議決しないときは、参議院の議決を国会の議決とする。 〔議院の国政調査権
第五十六条 両議院は、各々国政に関する調査を行い、これに関して、証人の出頭および証言、記録の提出を要求することができる。
国務大臣の議院出席〕
第五十七条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとに関わらず、いつでも議案について発言するために議院に出席することができる。また、答弁または説明のために出席を求められたときは、出席しなければならない。
弾劾裁判所
第五十八条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
(2)弾劾に関する事項は、法律で定める。