望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

3つの大地震

 2011年に発生したM9.0の東日本大震災では東日本など広範囲が大きく揺れ、さらに巨大な津波岩手県宮城県福島県など太平洋沿岸部を襲い、死者・行方不明者が計2万2千人以上に達した。震源域は南北約500km、東西約200kmとされ、宮城県牡鹿半島では東南東方向に約5.3m水平移動し、約1.2m沈降するなど東北地方から関東地方にかけて東向きの地殻変動が観測された。

 巨大な地震災害に加えて、東京電力福島第一原発津波による全電源喪失が発生し、大規模な水素爆発が複数回起きて大量の放射性物質が大気中に放出され、広範囲の住民が避難を余儀なくされた。当時の推定では、大津波による漁船被害は2.2万隻以上、農地の被害は2.3万ha、建物の被害は全壊6.2万戸、半壊2.5万戸、一部破損19.4万戸。避難生活を余儀なくされた人は最大で40万人以上とされた。

 1995年に発生したM7.3の阪神大震災は内陸の断層が動いた直下型地震で、神戸市などや淡路島北部で大きな被害が生じた。死者6434人、負傷者4.4万人、建物の被害は全壊約10.5万棟、半壊約14.4万棟。阪神高速道で高架が横倒しになる区間が生じるなど交通や鉄道網にも大きな被害が発生し、水道や電気、ガス、電話などライフラインが絶たれた。避難生活者は約31.7万人。震源は淡路島北部で深さは16km。

 死者のうち窒息・圧死が77%とされるなど住宅などの倒壊による被害が多く、また、焼失棟数は7574棟で全焼が7036棟になるなど火災が広がった。神戸市長田区など木造住宅が密集した地区での建物の倒壊と火災の被害が激しく、当時のニュースでは取材のヘリから神戸市のあちこちで黒煙が立ち上っている映像が中継された。各地から駆けつけた大勢のボランティアの活動が目立ったのも阪神大震災だった。

 2023年にトルコ南部でM7.8の大地震が発生した。活断層によって地表に9.1mのズレが確認され、「内陸の地震で水平方向のずれとしては世界最大級だ」と研究者。この地震はプレート境界で発生したものだが、2つのプレートが直接ぶつかり合っているため内陸型の直下型と似た地震だった。今回の本震のエネルギーの規模は2016年の熊本地震の20倍だったという。

 トルコとシリア合計の死者数は5.2万人以上とされ、倒壊した建物は22万棟以上、被災者は2千万人以上とされる(トルコとシリア両国)。大きな地震に繰り返し襲われているトルコは耐震基準を厳しくしたのだが、金を払えば見逃してもらう仕組みがあったり、耐震性を損なう改築が横行したりと実態は以前と変わらず、多くの建物の倒壊による多くの死傷者の発生は「ある程度、防ぐことができた」ものだったかもしれない。

 3つの大地震の発生メカニズムは異なるが、地表に住む多くの人間の日常生活を破壊し、建物の倒壊などで甚大な人的被害を発生させた。さらに被災地を東日本大震災では津波が襲い、阪神大震災では火災が広がり、トルコ大地震では余震のたびに建物が次々と倒壊した。大地震は繰り返し発生すると想定して建物や交通網やライフラインなどを強化するしか対応策はないことを3つの大地震は教えている。