望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





69年周期説があった


 1923年9月1日に東京、横浜などを襲った関東大震災地震の後に方々で火災が発生し、燃え広がって、関東全体では死者・行方不明者が14万人以上という大惨事だった。今では大地震というと、東日本大震災阪神大震災をまず思い浮かべるが、1995年に阪神大震災が起きる以前、大地震でイメージするのは関東大震災だった。

 東日本大震災以降にマスコミは、「次にくる」大地震の不安を煽る記事を頻繁に載せ、東海沖だ、東南海だと、読者への刺激を高めるためか、被害の深刻さはどんどん拡大する印象もある。だが、マスコミが「大地震が来るぞ。さあ大変だ」という記事を載せるのは以前から珍しいことではなかった。

 阪神大震災が起きる以前にマスコミを賑わせたのが、関東大震災の69年周期説だ。これは、東大教授の河角広氏が唱えたもので、南関東では約69年周期(前後に十数年の幅がある)で大地震が発生しているというもの。過去の歴史から、鎌倉での震度5以上の強震を拾い上げて傾向を導き出したものという。

 1923年から69年後は1992年。その十数年前から、うっかり69年周期説を信じた人は「そろそろ関東大震災が来るかもしれない」と不安になった。そして1992年が過ぎ、翌1993年に北海道南西沖で大地震が発生して奥尻島津波に襲われたが、関東大震災の再襲来はなく、2011年3月11日を迎えた。

 69年周期説はどうなったかというと、関東で発生する地震の研究が進んで、学会で否定されていた。現在唱えられているのは、関東で起きる大地震は2種類あるという説で、2種類とは、1)プレート内で断層が動いた時などに起きる直下型、2)相模トラフで起こる巨大プレート間地震。1)は約70~80年周期で、2)は約200年周期だという。

 1923年の関東大震災は2)のタイプなので、関東大震災の再襲来は当分先ということになるが、直下型が70~80周期で起きるのなら、そう安心してもいられない。また、69年周期説を唱えた河角氏は、鎌倉での震度5以上の強震を数え上げたのだから、その程度の強震が一定の周期で関東を襲うことも確かなのだろう。つまり、震源はさておいて、大きな地震が関東を襲う可能性は、いつでもあるということか。