望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

神は1人

 「ゴッド ブレス アメリカ」のゴッドと、「アッラー アクバル」のアッラーとは同一のもの、神は1人(一つというべきか)であるということを日本人のどれだけが知っているだろうか。

 天地の創造主であり絶対的存在の神。アメリカ人は神がアメリカに味方していると思い、イスラム教徒は神がイスラムに味方していると思う。どちらも、神は自分達と共にいて、神の正義により裁かれるのは相手側だと考える。神が絡むと、そこでは対話は成立するだろうか。

 旧約聖書ならともかく、イエスの言葉を集めた新約聖書ムハンマドの言葉を集めたコーランという神の言葉を伝えているという2冊の本を各々信じる人々には、見えている神も異なるだろう。そこに、神の真意は何かと問うても、共通項はなかなか出て来ないだろう。

 政教分離で、政治を人間社会のシステムとして効率化したキリスト教の側。経済にも同様に宗教を持ち込まず、産業革命を経て近代化したキリスト教の側。現実には武力においてもイスラム教の側との差は歴然としている。現世での優劣ははっきりしている。来世は?となると、それこそ宗教の領域である。

 アフガニスタンでの戦いはアメリカの圧勝に終わったが、混乱が続き、武力では何も解決しないということは、戦闘を続けて来たアフガニスタン自身の歴史が証明している。民主主義が普遍の原理だというなら、アメリカはアフガニスタンで民主主義を実現しなければならなかった。その結果、アメリカに友好的でない政権が出来ようとも、民主主義を(恩着せがましく)押し付けることができるのは、アメリカ以外にないからである。