望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ガンダーラ

 9.11は2001年のこと。その年の10月7日から米軍などがアフガニスタンへの空爆を始め、11月13日に北部同盟がカブールを制圧した。03年3月にはイラク戦争が始まり、4月に米英軍がバクダットを制圧した。

 ガンダーラをご存知か? ゴダイゴのヒット曲のタイトルでもあるが、本来は古代インドにあった王国のこと。その位置は、現在で言えばアフガニスタン東部~パキスタン北西部あたり。1~5世紀の仏教を信奉するクシャーナ朝のころが最盛期だったという。ガンダーラ美術はギリシャ様式の影響を受けた仏教美術として有名だ。



 ガンダーラを含めてアフガニスタンパキスタンの国境付近といえば、ビンラーディンらアルカイダが隠れ、アフガンを追われたタリバーンの拠点になっていたとされる。現代のガンダーラには、不穏な空気が充満しているようだ。



 アフガンをタリバーンが支配し、イラクではフセインが独裁を続け、イランはイスラム革命国家となり、インドはアメリカの言うことなど聞かないーーそんな当時の国際情勢の中ではパキスタンを「確保」しておくことは米にとって重要だった。しかし、情勢は常に変化する。インドは米との経済関係を強め、「話が通じる」ようになった。

 パキスタンの地方では部族性社会の影響が強く、政府の統制は限定的とされる。それゆえアルカイダタリバーンなどが潜伏することができたのだが、周辺情勢の変化でパキスタンを「確保」しておく米にとっての価値が低下した。



 他国に介入する時に、民主主義を声高に言い立てる米が、民主選挙の結果として、米の言いなりにならない政権が誕生すると、その国の主権を無視する。米の言う民主主義には「アメリカにとって有益な」という定義があるようだ。



 現代のガンダーラ辺りには、中東や中央アジアなどから武装ゲリラが集まっているという。ソ連がアフガンに侵攻した時に武装ゲリラを援助・育成したのは米で、米は「自分で自分の首を絞めた」形だ。対テロ戦とは、勝利者のいない戦らしい。