望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

選挙はやらないの? 

 こんなコラムを2001年に書いていました。

通行人A「アフガニスタンを米軍などが攻撃し、タリバーン政権が倒れた後、どうするか。元の国王を引っぱり出そうなんて話が流れている。何が国王だ。そんな奴が出て来ても、政権の正統性は何もないじゃないか」

望潮亭主人「欧米でも日本でも誰も、アフガニスタンで民主的選挙をしろと言い出さない。可哀想な難民たち、哀れな被害者ですとマスコミは同情を煽るが、アフガニスタンは彼らの民意を反映した国になるべきだ、なんてことは言わない」

通行人B「カンボジアでも東チモールでも民意の反映をと選挙をさせ、国際監視団なるものも派遣したのに、アフガニスタンではそんな話が出ない。イスラム圏にはさすがの欧米も民主主義の押し付けはできないらしいな」

望潮亭主人「押し付けたら、選挙結果は欧米の思う通りに行かない。アルジェリアが典型だが、自由選挙をすれば、イスラム原理主義政党が勢力を伸ばす。そこに、国内での民族対立が絡めば最大民族派が勝つ。アフガニスタンに当てはめれば、タリバーン系が勝つ。だから、アフガニスタンに民主主義を、自由選挙をーなんてアメリカとその追随国は決して言い出さない」

通行人A「ラーディンが関与したという証拠をアメリカは追随国に開示したが、公開できない代物らしい」

通行人B「そりゃそうさ。盗聴やら何やら、アメリカの法廷なら、違法性から証拠採用されないものばかりだろうから。まあ、アメリカ側に法廷でラーディンを裁く気は初めからないから、まともな証拠も集めてないだろうし、決定的な直接証拠をつかめなかったから、ハイジャックをさせてしまった」

通行人A「これは戦争だとブッシュが言ったが、戦争なのかテロなのか。21世紀の新しい何とかだと、戦争の定義さえ詰めずに騒いでいる。ひどい奴になると、テロを根絶するために米軍などの攻撃が必要だと断ずる。テロの根絶とはどのような状態なのか。歴史を振り返ればテロの根絶など不可能なことが判るだろうに」

望潮亭主人「組織を叩けば、一度に複数のハイジャックを行うといった大規模なテロはできなくなるだろうが、自爆テロは一人でもできる。ラーディン一派を殺したところで、戦国時代のように一族郎党をアメリカが皆殺しにできるはずもなく、恨みは残る。戦争なら宣戦布告をし、停戦協定などで鉾をおさめるのだろうが、今回、アメリカは誰とも停戦協定を結べまい」