望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

アメリカの下駄の雪

 こんなコラムを2003年に書いていました。

望潮亭主人「また、酔っぱらっているね」

酔っ払い 「不況になって急に、この国が武ばってきたのは何でですかい?」

主人   「これまでなら、金を出して済ませて来たものが、懐具合も厳しくなって、そうもいかなくなってきたんだな。それでこの国は、兵も出します、汗もかきます、血も流しますから、金は出せないけどフツーの付き合いをさせて下さい、ってところか」

酔っ払い 「それにしては、威勢よく煽り立てている連中が目に付いて仕方がねえ」

主人   「国家主義者が軍事優先国家にしたがっているのに、マスコミも何故か腰が引けてキチンと批判できなくなっている。アメリカの圧力をまさに渡りに舟として、以前ならマイナーな扱いでしかなかったような連中が日本軍の再構築をぶち上げている」

酔っ払い 「それじゃ、日本は戦前のような社会になるんですかい」

主人   「そうは、なれないだろう。アメリカのコントロールできない国に日本がなると、アメリカにとっての脅威はイラクやイランの比じゃない。それこそアメリカの最大の“敵”になる。アメリカの傘下を脱した日本軍の独り歩きはアメリカの容認できるものではない。そうなったらアメリカは本気で日本を潰しにかかるだろうな」

酔っ払い 「わあー、戦争だ。この前の借りを返してやる」

主人   「無理さ。中東の石油はアメリカが押さえたし、シーレーンも日本単独では確保できまい。食料だって輸入に頼り、逆に製品の輸出はアメリカ市場に頼っている」

酔っ払い 「だから日本も核を持つしかない。そうなればアメリカもうかつには動けなくなる。日本の技術力ならすぐにでも持てる」

主人   「日本がアメリカの傘下を脱した時、核を持っているとアメリカに対して使用する可能性があるから、アメリカは日本が独自の核を持つことは絶対に許さない。ロッキード事件みたいなスキャンダルを仕掛けて、核を持とうとする政府をつぶすだろうな」

酔っ払い 「すっかり酔いが醒めちまった」

主人   「だから、アメリカの後をどこまでも付いて行きますと言い続ける以外に、日本の国家主義者が軍備増強を進める道はないのさ」