望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

搾取ってステキ

 労働者は資本家に搾取されているから、革命を起こして労働者が権力を握り、経済構造を資本家を排除した構造に変えなくてはならないというのが共産主義だと思っていたが、最近の中国を見ていると、共産主義って何だったのかと混乱する。

 多大な犠牲を伴いつつ革命を成し遂げ、経済の自力発展を試みたものの、いつまでたっても「テイクオフ」できず差は開くばかり。そこで成長重視へ方向転換、資本主義経済に仲間入りさせてもらい、低賃金を武器に欧米など先進資本主義国から工場を誘致した。これって、外国資本による中国人労働者の搾取を公認したことにほかならない。搾取をなくすために革命を行った国が、外国資本による搾取を認めることによって経済発展した。これが今の中国だ。

 中国が豊かになることはいい。でも今の中国には何か釈然としないものが残る。革命で共産主義国家になったために経済発展から取り残され、人々は貧しいままだった。それが、世界の資本主義経済に取り込まれた時から、貧しさが「武器」になるとは、お釈迦様でも毛沢東でもご存知あるめえ。ましてや、1党独裁の共産党主導で、外国資本による人民の搾取を「武器」にするのだから、タチが悪いや。

 パンデミック以前には日本ではデフレが続き、世界的にもデフレ傾向が出てきていたが、その主な要因は中国などの低賃金労働者群の存在だとされた。これは歴史の皮肉である。崩壊した共産主義が資本主義に残した置き土産に見えてくる。先進資本主義経済に「新たな供給源」が加わることにより、需給バランスの波は大きくなろう。